yuriのblog

日々のあれこれや、小説・海外ドラマ・ゲームなど、好きなことについてたくさん書いていきます。

キャサリン・マンスフィールド「不機嫌な女たち」

 

 

*以下の文章は、以前読書サイトにて投稿していたものになります。そのサイトが閉鎖される為、こちらに文章をうつしていきます。

 

「装丁に惹かれて手に取ったら」

2019.10.09

 


表紙がとても可愛い。サングラスやリップ、手袋、コンパクトなどのイラスト。
に、惹かれて何気なく手に取ったら予想以上に心動かされて、ここ最近でもお気に入りの一冊になった(また言うてるな)。

読んだのはキャサリンマンスフィールド「不機嫌な女たち」。

 

作者のことは知らなくて、短編集だったのだが、どの短編も心の動きが中心で読んでいてゾワゾワ、とうの昔に書かれたとはまるで思えなかったし、今日の、誰かのそれからさっきまで読んでいた自分のことのようでもあった。それぐらい心動かされる、特別目立った展開があるわけでないのにハッとさせられる贅沢な短編集だった。

((なんて満ち足りていているんだろう、なんて素晴らしい一日……!))と思っていたら一瞬の出来事でその日一日だけでなく過ごしてきた人生の核のようなものがわからなくなって足下からボロボロ崩れ落ちて行ってしまいそうな瞬間だったりとか、陽気に街へと繰り出して行ったらこれまた何気ない一言によって必死に取り繕っていたはずのものが実は簡単に壊れてしまう脆いものであったと気付いてしまったりだとか、少女たちの社会にもしっかりある悪意とか、視点がガラリ変わると物語はまるで違う景色をみせたりなど短編の中に、とある何気ない日の些細な出来事の中にけれど登場人物たちの過ごしてきた時間が気持ちが詰まっていた。善意にみえてその中を覗けばしっかりと黒々したものが渦巻いていたり、家庭教師としてあらたに旅立とうとする若い女の無知につけ込む男たちがいたり文体も、出来事が語られながら内面にとつぜんするり入って行ったりするところがふだんの心内と近いような感じでとても新鮮であらたな出会いだったなあ。にしても知らない作品だらけ、やのに未だに発見があって嗚呼となる。一度読んだだけでは勿体ない作品集だった。もっと丁寧に味わいたいからまた読まなくては!