*以下の文章は、以前読書サイトにて投稿していたものになります。そのサイトが閉鎖される為、こちらに文章をうつしていきます。
「やっぱり手紙っていいな」
2017.01.22
インターネットが主流になったいま、手紙を書く機会はぐんと減ってしまった。
どこにいてもどんなに離れていても、メールを使えば数秒でメッセージを送りあうことができる。
学生時代のころは、手紙交換が流行った。
それぞれがえらぶ「お気に入りの便箋」は個性が出ていて面白かったし、筆跡から相手の性格、丸文字、活発な走り書き……イメージが垣間見えて、手書きならではの楽しさだった。
本書「往復書簡 いま、どこですか?」は、お互いを「姉妹のよう」だと公言するほど仲のいい、小澤征良さんと杏さんによる旅の記録。
世界各地を飛び回るほどお忙しいふたりは、いつもとおく離れた場所にいるけれど、合間をぬって、現地から手紙を送りあう。
冒頭には実際の手紙が掲載されていて、ニューヨーク、ハワイ、イタリア、沖縄、奈良……など、様々な場所から紡がれるお互いの様子。
便箋の隅にそえられたイラストもかわいい。
何度も手紙を交わしあったのち、ふたりは北海道へ旅に出る。
その名もオオカミの旅。出会ってすぐ打ちとけた理由の一つに大の「犬好き」が共通していたというふたりは、生き物の知識が豊富。
小澤征良さんがオオカミ好きということもあり、実際にオオカミと触れ合うことができる、夫婦経営のログハウスへと向かう。
後半は、そんなオオカミの旅について、それぞれのエッセイが掲載されている。
どちらにも共通しているのは、まっすぐな目と、人間だけが優位に立ってはいけない、ということだった。
便利なものが増えても、人々は孤独を抱えている。
お互いを思い合う密度の濃いやりとり。どんなに時代も、過ぎてゆく時間は同じだからこそ。