yuriのblog

日々のあれこれや、小説・海外ドラマ・ゲームなど、好きなことについてたくさん書いていきます。

エリザベス・テイラー「エンジェル」

 

 

*以下の文章は、以前読書サイトにて投稿していたものになります。そのサイトが閉鎖される為、こちらに文章を転載していきます。

 

 

 

「主人公エンジェルが一周回って愛おしい」

2017.09.27

 


いつかああなりたい。夢を叶えたい。ここから脱したい。
そんなふうに、人は誰しも未来に想いを馳せるものだけれど、その熱意があまりにも大きすぎると、かえっていつまでも、欲という出口のない迷路から出られなくなってしまう。

 

主人公のエンジェルは裕福ではない家庭で育ち、自らが置かれている環境を恥ずかしくおもっている。働きづめの母や叔母にも尊大な態度をとり、学校の友達には、想像の世界でつくりあげた嘘の世界を聞かせて悦に入るのだった。

 

けれどもある日、絶対に口外しないでと言い聞かせていた嘘の話が母親の耳に入ってしまう。黙っていることができなかった友人たちがそれぞれの母親たちに明かしたせいだった。母は嘘をついて家族を辱めたエンジェルを許せず怒り狂い、叔母は学校へ行かなくなったエンジェルに説得を試みるも反対に罵倒されてしまう。

 

次々と敵を作っていくエンジェルは、けれど信じて疑わない。自分は必ず高名な作家になり、将来今の現状を懐かしくおもう日がくるのだと。

 

読みながら、とにかく主人公エンジェルのキャラクターがおもしろく、編集者に修正を促された際も「嫌です」の一言で片付けるところなど思わず笑ってしまう場面が多々あった。とにかく自分を中心に世界は回っているとでもいうような我儘っぷりで、作品が出版されると次々に降りかかる批判にも「こいつら何言ってんだこんな素晴らしい小説がわからないなんてやれやれ」としか思わない。そんなふうに、どう転んでも自分を曲げないエンジェルは痛々しくもあるけれど一周回って清々しくも愛おしくもなるのだった。

 

いろいろと便利になった今だけれど、なにか少しでも失敗を犯すと銃弾されてしまうから、人々は言いたいことに蓋をしているような気がする。まあ、エンジェルはそれでなくとも唯一無二でどんだけパワーに満ち溢れとんねん! とも言いたくなるのだけれど、わたしはどこかで、みっともなくてもバカにされても通俗的だと見下されてもーーもちろん振り回される周囲はたまったもんじゃないけれどーー自分を信じ抜くエンジェルが羨ましくもあるのだった。