yuriのblog

日々のあれこれや、小説・海外ドラマ・ゲームなど、好きなことについてたくさん書いていきます。

ポール・オースター「リヴァイアサン」

 

 

 

*以下の文章は、以前読書サイトにて投稿していたものになります。そのサイトが閉鎖される為、こちらに文章を転載していきます。

 

「二年生最後はリヴァイアサン

2018.11.30

 


はじめて読んだポール・オースターの作品は「鍵のかかった部屋」で、読みながら景色がぐらぐらする感覚に面白さを感じ、それからはちびちび読んでいる。だから未読の作品はたくさんある。制覇したくない気持ち。ひとつの作品を読み終えてもまるで読んでいないようで、なんでこんなに面白いのだろうとため息をついて、以後繰り返し。なんでこんなに面白いのだろうのなんでの部分はいまだに不明だ。でもだからこそ好きなんだろうとも思う。

今回手に取ったのは「リヴァイアサン」。

ある日ひとりの男が自作の爆弾の暴発でこの世から消え去る。体は文字通り吹っ飛んで、ばらばらに散って身元不明。けれど “私” は知っていた。その時点では手掛かりさえない男の正体を、誰よりも私だけは。

サックスとはお互いに特別な存在だと思っていた。今も変わらず思っている。同じ作家で、書き出せば言葉と戯れているようで、人の心に自然に入ってくるサックス。長い時間を共に過ごし、環境の変化があっても会えない期間が続いても、無二の存在であることに変わりはなかった。

サックスはなぜ爆弾で死ぬ羽目になったのか。なぜ危険な人物として捜索されることになったのか。ひとりの男の人生を、なんとか掴み取ろうと想起する私。

男の最終地点に居合わせることはなかった、最後の数年は関わり合いも薄れていたそれでも、ふたりが通った数々の道や出会いがある限り、直接的ではない部分もあるにせよ必ずしもサックスだけの物語とは言い切れないし理由なんて絞れない。些細な出来事が何重にもなり、本人の意図しないところで膨らみ誰から見るかによっても形を変える物語。というこれもまた私という語り手から見たサックスの物語であるのだから再び目の前は霞んで。

自分でも分からないまま何かを探し続けていたサックス。空中に体を投げ出された瞬間これまでの景色が一瞬にして入れ替わったように、今日の姿がひとりの人間のすべてを表すなんてことはなくて。読んでいる間にも私自身過去を回想していたし、特別な思い入れもない子供の頃よく行ったスーパーの店員を思い出したり、と言いつつもそれだって「リヴァイアサン」を読んだからこそ出現した再会なのだからどこかに眠っていた記憶もまたひとつの、今との繋がりであるのだった。

サックスの人生。サックスの人生を振り返る私を追いかける私の日常も本のなかとまざりあう。追いかけられることで見られている自分を観察していた登場人物。を読みながら追う私も読者でありながら追われているようで、ぜんぶがやっぱり不確かで分からなかった。文字を辿っている時間が楽しかった。