yuriのblog

日々のあれこれや、小説・海外ドラマ・ゲームなど、好きなことについてたくさん書いていきます。

ウェイク・ワン「ケミストリー」

 

 

*以下の文章は、以前読書サイトにて投稿していたものになります。そのサイトが閉鎖される為、こちらに文章をうつしていきます。

 

「景色が違ってみえた」

2019.11.28

 


授業のことはほとんど覚えていない。
特に化学は、先生の喋るときの癖しか頭のなかで数えていなかった。黒板に書いてあることの1ミリも理解できなかった。

でもこの本はおもしろかった。
ウェイク・ワン著「ケミストリー」。

 

いつもとは世界がまったく違ってみえた。
文に散りばめられている化学の記述は相変わらず理解には遠過ぎるのだけれども、作者の語りで空も色もなんてことない日常が違う見え方で映った。全てはわからないんだけど映った。

主人公「わたし」は両親に厳しく育てられた。両親は、中国系移民で、血の滲むような努力でアメリカへと移り住んできた。両親には大きなおおきな期待をかけられる「わたし」。ひとりっ子の「わたし」。「博士号取得はどうなった?」との電話。両親にはきちんといえない。完璧な恋人がいるけれども彼についていく(彼は新天地でやっていく予定があった)のも果たしてほんとうにそれで良いのかもわからない(プロポーズ、でも夫婦ってなんだろう?)曖昧な返事をしているうちに彼との距離も離れていって、けれど一方で研究のほうも上手くいっているとは言い難い調子で、幼いころの両親の不和、父親の努力、母親の孤独、言い争いの場面の記憶、通うカウンセラーの助言や親友との会話(お互いの悩みを何度も電話しあって)などで物語は進んでいく。独特の語りで、それは化学の記述が散りばめられているのもそうなのだけど、文体もカラッとしているので内容は結構キツいだろうなあ、しんどいだろうなあとはおもいつつもそれほど重た過ぎるというのでもなかった。それは「わたし」の両親をおもうきもちと、それから自身もまたおなじように血の滲むような努力を重ねてきたからこその語りがチャーミングで所々クスッと笑えたからなのだろう、ラストにはやっぱり強いひとだなって力をもらえて一気読みしてしまった。なんだか関係ないかもしれないけれども「コンタクト」を思い出してしまった(もちろん内容は違う)。

 

いろんなことあるなかでそれでも立ってる「わたし」は素直にすごいなっておもう。分野は多々あれど、みんな同じだ、知りたいきもちやそのなかでもがいてるきもちは。