yuriのblog

日々のあれこれや、小説・海外ドラマ・ゲームなど、好きなことについてたくさん書いていきます。

「みき たく やく!」--アーノルド・ローベル「きりぎりすくん」

 

*以下の文章は、以前読書サイトにて投稿していたものになります。そのサイトが閉鎖される為、こちらに文章をうつしていきます。

 

 

 

「みき たく やく!」

2020.02.04

 

 


むかし読んだけれども覚えていない本を読んでみたくなった。

それで見ていたのがこの読書カードで、

 

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手元にある、数少ない子ども時代の物なのだけど、
いちばんはじめの「きりぎりすくん」を探してみたら、これかな、というのが見つかった。

アーノルド・ローベルの「きりぎりすくん」。

 

作者の作品といえば、かえるくんのお話があまりにも有名。

 

教科書にも載っていたのでよく覚えている。
でも、いちばん記憶にあるのはお話よりも
「みき たく やく!」
の6文字なのだった。
というのも、翻訳者さんの名前が、教科書ではひらがな表記だったので。
わたしもお姉ちゃんも、音読、といえば未だに真っ先に
「みき たく やく!」
を思い出してしまう。
「なつかしい! みき たく やく!」
と言ってしまう。

かえるくんのお話も、とてもすきだったのだけど。
それでも、
みき たく やく!
の6文字を後付けになるけれど、
リズム感がお気に召していたのか、呼び戻してしまうのだった。
(なんだか色々、ごめんなさい)

というわけで、
「きりぎりすくん」を読んでみたのだった。

ながーい足で、
どんどん突き進んで行くきりぎりすくんはとっても、すてき。
だって、きりぎりすくんは「たびにでたい」とおもったのだから。

ぜんぶで、6つのお話があった。
その中でも、特にわたしがすきだったのは「ふなたび」。

たびのとちゅう、
きりぎりすくんを呼び止めたのは「か」。
虫の、蚊である。
みずたまりを飛び越えようとしたら「か」に、呼び止められたのだった。
きまりなのだから、「か」の乗ってるわたしぶねにきりぎりすくんも、乗りなさい、と。
そこで、きりぎりすくん。

「からだが ボートに あわないんです。」
「か」も、負けじと。

「なんといおうと きまりは きまりだ!」
挿絵を見ながらの、シュールなふたりのやりとりにはおもわず笑ってしまう。
きりぎりすくんは、考えた末、

「こうするしか ありません。」
と、ある行動に出る。

怒るのかとおもいきや、
意地張ってた「か」のほうもイレギュラーにもすぐ対応

「しゅっこう。」
と、おおごえで、ノリノリのご様子。たまらんなあ。

そしてきりぎりすくんが渡り終えたあとも、
つぎの客のためにいそいそと戻っていく「か」、が、しつこめの愛おしかった、いつもぱん、と叩いてごめんよ、「か」、次の夏、刺されやすいわたしはどうすれば良いのさ、「か」。

 

あのころのわたしは、
「きりぎりすくん」をどんなふうに読んだのかな。
「か」、のところで笑ったかな。
それとも、
違ったところで心を、揺らしたのかなあ、揺らさなかったのかなあ。
覚えていないなんて、ずっと昔といえ、おなじ自分であるのにふしぎ。でも、それを言い出すとまた、自分とはなんぞやとか、永遠の考え事が始まるので終わり。

そしてこれからは、
あらたな「きりぎりすくん」を胸に、持って。