*以下の文章は、以前読書サイトにて投稿していたものになります。そのサイトが閉鎖される為、こちらに文章をうつしていきます。
「真面目でまっすぐ。だからこそマツコさんは愛される」
2016.11.19
孤独で気持ちが塞いでいるとき、明るいドラマや苦しいニュースは見る気にならないけれど、マツコさんの出ている番組は不思議と見てしまいます。そして気がついたら、潔い物言いに心が晴れやかになることもしばしば。そういうわけで、エッセイのレビューをメインに書いている私は、この機会にマツコさんの本も読んでみたくなりました。
マツコさんといえば、今のタレントとしての姿になる以前、ゲイ雑誌で編集のお仕事をしていらっしゃったことは番組で見て知っていました。そして、コラムニストやエッセイストとして活動されていたことも。その活躍を中村うさぎさんに見出され、メディアに出られるようになったそうです。
本書「デラックスじゃない」は、作者の10年間を綴ったエッセイ。自伝というほど重くなく、その時々に感じたことが綴られていてさらっと読めるものでした。とはいえ「今の姿になるまでのこと」「両親のこと」「プライベートのこと」などが書かれていて、テレビの姿しかほとんど知らなかった私は興味深く読みました。
読んでいてしみじみ思ったのが、テレビでは歯に衣きせぬ物言いが目立ってしまうけれど、そんな姿をマツコさん自身が一番客観的に見ていらっしゃるのだなぁということ。テレビというメディアに恩を感じていてその要求に応えたい。そんな真面目なマツコさんだからこそ多くの人に愛されるのだなぁと思いました。
毒舌キャラと呼ばれる人はたくさんいるけれど、作者はどこかできちんと線引きを意識されている。だから聞いていて嫌味に聞こえないんだろうな。孤独を抱えている作者には、人の痛みが分かるのだと思います。
ただ意見を吐きだしているのではなく、意志をもって仕事をされている。すべての人を納得させられる正義なんてないのだから、私も自分を持たねば!そんな勇気をもらえたと共に、作者の心を少し覗けただけでもこれから番組を見るのがより楽しみになりました。ほかのエッセイも読んでみたいなぁ。