yuriのblog

日々のあれこれや、小説・海外ドラマ・ゲームなど、好きなことについてたくさん書いていきます。

フランソワーズ・サガン「悲しみよこんにちは」

 

 

*以下の文章は、以前読書サイトにて投稿していたものになります。そのサイトが閉鎖される為、こちらに文章をうつしていきます。

 

「冬に読んでも太陽が強いです」

2020.03.01

 

 


悲しみよこんにちは」を読んだ。

すごく映像が浮かんでくる作品だなと思った。わたしは、いつの間にか「わたし」の心から知らない世界を覗いていた。知らない世界なのに物語の中の日照りの感じとか、さらされた肌の感じとかが伝わってきて、ひりひり、読んでいる今は冬なのに冬ではない感じだった。
「わたし」の考えていること、心の中はとても素直。だからこそ、残酷。というのは知っている感情だから、読んでしまう。
特に「わたし」のアンヌへの気持ち。それは、わたしには、「わたし」が父に抱いていた思いよりずっと、どちらが強い、弱いではなく、何色もの、不安定な抱えきれない物に見えた。いつだって完璧だったアンヌ。完璧過ぎないところまで完璧に見えていたアンヌに、「わたし」は日々、憧れと共に思いを募らせていって。

後半の数行は繰り返し読んだ。
だから、「わたし」が見ていたようにわたし自身の中にもアンヌがいっぱいだ。アンヌがまだ胸の中を占めている。戻って出会った頃のアンヌから始め直してみたい気持ちだった。アンヌは、魅力的な人だ。「わたし」の目を通したからこそ、とても。ということは「わたし」の心の声も、また。

人の気持ちはじぶんが思っているよりもずっとずっと、ずっと複雑なものだから、じぶんだけが複雑なものを抱えているなんて、そんな気になったらおわりだ。