yuriのblog

日々のあれこれや、小説・海外ドラマ・ゲームなど、好きなことについてたくさん書いていきます。

トマス・H・クック「緋色の迷宮」

 

 

*以下の文章は、以前読書サイトにて投稿していたものになります。そのサイトが閉鎖される為、こちらに文章をうつしていきます。

 

「読みやすく深く」

2020.04.16

 

 


2冊続けてトマス・H・クック。
最近知ったばかりなのだけど、読みやすく深く、丁寧で決して明るい話ではないのだけど読んでしまう。

今回読んだのは「緋色の迷宮」。
とある事件から主人公の男が、それまではまるで疑ってこなかった過去や家族の存在を、直視せざるを得なくなって、地盤が緩んでわからなくなって、というおはなし。

なんて簡単に書いてしまったけど、書かれている内容は陰鬱ではあるけれど、今回も主人公だけでなく、その他の登場人物、彼の妻、息子、兄、父、母など(もちろん少女の家族たちも含む)にも一人称ではあるが照明があたっており、単なるコマとしてでなく一人ひとりに心があるのを感じられるのでこちらも(読者側のわたしも)、出来事というよりかは気持ちをゆっくりと読んでいった。そのように読んでいった中でもおもっていたのはやっぱり前回と同様、読みやすくかつ心の奥深くまで届くというのはジャンルなど関係なく「作者の小説」になっているからすごいなあとおもって、

また終わり方も「色々あったけれど最後はこんなに晴れやかだよちゃんちゃん」とかでなく真摯であるからこそ容赦ないけれど、
「うんそうなるよね」とすとんと思えるのはそれまでの過程があるからで、読み終わったいまも残っているのは悲劇的な面というよりかはいちばんはわたしだってなにを見てきたか(あるいは見てこなかったか)ということなのだった。