*以下の文章は、以前読書サイトにて投稿していたものになります。そのサイトが閉鎖される為、こちらに文章をうつしていきます。
「チボー家の人々」 13
2020.12.27
思い入れのある小説をきっかけに手に取って、最初はどんな本かなあと思っていたけどいつの間にかきょう13巻。
とうとう読み終えてしまって、けれど読み終えた感じがしない。
最後のアントワーヌの言葉が小さな叫びのようでたまらない。
アントワーヌは自身の病状が良くないことを博士に診察してもらった際、ちょっとした表情から読み取って日記を綴るようになる。
そういったことは苦手だった、と書いていたけど、
彼は今(作品中の今)誰よりも死を見つめていたのだった。
医者であったアントワーヌ。父チボー氏の最後を看取り数々の臨終に向き合ってきたけど自分の、アントワーヌというひとりの人間の生きること死んでゆくことを見つめる目。
彼は、ジャックの息子に想いを書く。
きっとジャックの息子が読む頃は、まだ死のことからは遠くて分からないことばかりだけど、と。
読んでいる自分自身にもたくさん届いた。
不安だから本を読んでいる。不安だから、寂しいから、なにかを分かってるからじゃない。むしろ、なんにも分かっていないからすがるように読んでるんだ(わたしの場合)
自分が何者か分からなくてそんなのみんな分からない、けどそんなありふれた言葉では満足できなかった。自分がどこから来てどんな人たちが作ってなにがあってどうして、ぜんぶが分からなかった。腹立たしかった。結局まだなにも分かってないけど。
様々な人が様々な状況で、
変わっていったチボー家の人々。
作者はもういない。そのことがものすごく不思議だ。それってどういうことだろう? どれほど苦しい中で書かれただろう。アントワーヌの自問自答は、きっと作者の思いも入ってるだろうから。それはもちろんジャックやジェンニーにも、命が吹き込まれ届いている。
しつこめに残ってる思春期的なものとは未だ綺麗さっぱり決別できていないけど、頑張りたいんだ。もうちょっと。それは多分そういうことをまったく考えなくなるってこととは違うんだ。
ジャックジェンニー、アントワーヌ、みんなみんな、ありがとう。