yuriのblog

日々のあれこれや、小説・海外ドラマ・ゲームなど、好きなことについてたくさん書いていきます。

テネシー・ウィリアムズ「ガラスの動物園」

 

*以下の文章は、以前読書サイトにて投稿していたものになります。そのサイトが閉鎖される為、こちらに文章をうつしていきます。

 

 

「久しぶりに読んだ戯曲」

2021.01.27

 

 

黄色い表紙に惹かれ、手に取った一冊。
短い作品だけど、読み終わった今もこの本のことを考えている。

主な登場人物は四人。
母、娘、息子、そして一人の青年。

作者のことは知らなかったのと、
小説だと思ったら戯曲だった。

戯曲といえば以前、

極端な私は張り切っていきなりゲーテの大長編を手に取り、わけ分からんくなり、苦手意識を持っていたけど、この作品はシンプルかつ、深く心に残る作品だった(ゲーテ悪くない)。

そして登場人物たちへの眼差しに愛があるなあと思った。

母、アマンダは若い頃のことを何度も子どもたちに語る。
社交的だった生活。
子ども思いではあるけど、その行動や言葉がかえって子どもたちを苦しめてもいる。

息子、トム。
詩をこっそり書いている。倉庫の仕事から飛び立ち、家族から離れ自分の人生を切り開いていきたい。

娘、ローラ。
脚を悪くして、内にこもっている。ガラス細工の動物を大事にして。

それぞれの思いがあり、誰の立場からでも読める。

母親は、ずっと家に居るローラを案じ、トムに負担をかけ、あれやこれやと指図、今でいうそれは毒親、ともとれるが、作者はアマンダの様々な方向からライトを当てるので、単なる悪役にならずとても息づいていた。グラデーションに写った。

それはトムも、ローラも。

さっさと家を出れば良い、とトムに言ってしまえばそこで終わるが、
だからといって思いまで無くならない。

ローラだって自信を持てばいい、といえばそれはそうだろうけど……。じっさい途中出てくる青年がローラにかける言葉にはちょっと感動しさえしたけど。おとぎ話のようには終わらず。残酷なこともある。やるせないことも。

生きていくことは容易くない。

だけど読み終えて思うこと。なにより眼差しがやさしかった。