yuriのblog

日々のあれこれや、小説・海外ドラマ・ゲームなど、好きなことについてたくさん書いていきます。

トマス・H・クック「ジュリアン・ウェルズの葬られた秘密」

 

*以下の文章は、以前読書サイトにて投稿していたものになります。そのサイトが閉鎖される為、こちらに文章をうつしていきます。

 

「聡明だった親友のジュリアンが、悲しい結末を選んだのはなぜ--?」

2021.05.25

 

ハヤカワ・ポケット・ミステリーを三冊連続、なんだか手になじんで持ちやすいし、という理由で、ひとつ前の読書に続いてまたもやトマス・H・クック。それほど暗い内容ではないと予想して読んだら、読み終えたいまはずどーんと悲しみに襲われてるけど、加えてこれはほかの作品でも思ったことだけどほんとうに微かな光ではあるけれども最後に、なんども目で追ってしまう言葉が、ささいな一言があったりして未だにじんわりその重みを。

題名のジュリアン・ウェルズというのは主人公の親友の名前。その人物は、聡明で、若いときは活発で明るく知性的で、まさに誰もが羨むような生命力に溢れたひとだった。そんなジュリアンが、人生を悲しい結末で自ら閉じてしまう描写から始まる。

その結末の「なぜ?」がどうしても離れない「わたし」は、彼の人生をじっさいに歩いてみるのだった。
彼が訪れた土地に出向いて、凶悪犯罪について書き続けていた作家であったジュリアンの景色を見る。

それでも、謎は深まるばかりだった。
「わたし」は、ジュリアンの妹と共に謎を追いながら、ジュリアンがあるひとりの女性の行方を追っていたことも知るのだけれど……。

残虐な描写もあるので、そこは読みながらなんども閉じたくなった。
しかし、最後の二ページは繰り返しになるけれどもなんども目で追った。その、目を背けたくなる展開の後の言葉だからこそ余計。

今回も、作者おなじみの手法、作中にいろんな本が出てきた。作家の名前も。

そのなかでも手紙が「読まれなかった」ことで悲劇を迎えると書かれていたトマス・ハーディの「ダーバヴィル家のテス」という本がまったくどんな本か知らないが今は読んでみたいなあ。