yuriのblog

日々のあれこれや、小説・海外ドラマ・ゲームなど、好きなことについてたくさん書いていきます。

トマス・H・クック「サンドリーヌ裁判」

 

*以下の文章は、以前読書サイトにて投稿していたものになります。そのサイトが閉鎖される為、こちらに文章をうつしていきます。

 

「前を向いて歩いて行くと決めたのだ」

2021.05.17

 

大学教授の夫、サム(サミュエル)は同じく大学教授である妻サンドリーヌを殺害したのではないか、と疑われている。

なので、裁判が進んでいくと共に、サムとサンドリーヌがどんなふうに出会って、それぞれどんな人となりか、明かされていく。

サンドリーヌはとても美しく、才能にあふれた人だった。

それに加え、才能をひけらかすことなく、サムからすれば才能を生かして、本を書けば良いのに、と思うのだけど、それはあなたの夢であり、私のではないわ、とはっきり言い返す。

また、いつか、どこかに学校を建てたいという夢も持っていた。同僚にも慕われていた。サムからすれば彼女の生徒たちは、物足りないように映っていたのだったが。

というのも、サムは、サンドリーヌからすれば、昔は「優しさ」を持っていたけれど、サム視点から続いていく回想を読んでも分かるように、今ではいろいろな物を、人を、見下して、諦めて、でも、自分にはまだ偉大な使命が残っていると思っている。

検察側からの容赦のない追求。
果たして、サンドリーヌは夫によって??

***

以前、二冊ほど作者の小説を読んだことがあるんだけど、
そのときもずっと、過去を振り返る作風だったのを覚えてる。
また、あちこちに作家の名前が出てくるのや、文学好きの登場人物も。

で、めちゃくちゃ暗いのだけど、そこが好きで今回も読んだ。

相変わらず心えぐられまくった(笑)

でも、今読めて良かったと思った。
頭でっかちになってるサムのこと、とても分かるからだ。

けど、それじゃいけないと思い、今年はたくさん経験がしたくて、ようやく少しづつ行動できるようになった。

だから、サンドリーヌからのメッセージが今の自分にもびしばし届いた。
この本で言うところの「理想主義」の穴にはまらず、自分の今いるこの場所をしっかり(失敗しまくりながら)歩いて行くのだ。そう決めたのだ。

なにより自分の言葉を大切にしていきたい。

言葉に頼りきるのでなく、時々助けてもらったり、離れたり、しながら、そんなふうに考えながら最後まで読んだ一冊。