yuriのblog

日々のあれこれや、小説・海外ドラマ・ゲームなど、好きなことについてたくさん書いていきます。

「魔法使いクラブ」青山七恵

 

*以下の文章は、以前読書サイトにて投稿していたものになります。そのサイトが閉鎖される為、こちらに文章をうつしていきます。

 

「変わっていくこと」

2019.04.17

 


青山七恵さんの「すみれ」は私にとって特別な物語だ。読んでいる最中も、読み終わってからもぐしゃぐしゃになった。ほとんどショック状態だった。大切な一冊になった。

「魔法使いクラブ」を読んだ。

子供、というのは特定の時期をあらわす言葉だ。
太陽や、コップみたいに在り続けるものではない。

「魔法使いクラブ」では、十歳だった結仁が、葵が史人が日々を更新していく。

私も子供だった。でも、読み終えてやっぱり思うのは、子供、という決められた何かだったわけじゃない。子供っていうのは単なる言葉であって、そのときも「今」だったからだ。こうして書いている今とまったく同じ今。

だからかなしい。だから寂しいし切ない。
過去、なんて言葉もあくまでも言葉。箱に過去が詰められてるわけじゃない。どこかで線を飛び越えてもいない。今をずっと続けてきただけ。

でもある一定の時期を過ぎると、確かに変化というのはある。周りは変わるし、当然自分も変われば空気も変わる。二度と戻らないものもある。たった数年前の今、考えていたことが幼いとされたり、自分でも馬鹿馬鹿しく思えたりするのだ。

結仁と、葵と、史人は魔法使いクラブをつくっていた。三人は幼馴染だった。結仁の家の物置小屋に入って、まいにち練習をする。お願い事をする。三人は、ずっと続けて行こうと約束をした。してからも、学校での環境は変わり、それぞれの立場も変わり。
それから、色々なことが分かったり、分からなくなったりする。いろんな事情が入ってくる。

入れ物のなかに侵入してきて押し出されて、
「子供だった」にゆっくり、でも確実に、変わってゆく。

うつくしい物語だな、と思った。
誠実に、やるせないこと、目を逸らしたくなることが書かれているという意味でのうつくしい。

変わることは怖い。戻れないのも、汚くなっていくことも。

たくさんの「今」だった頃が、今と同じように全身で感じていた切実な時間が、問いが、不安が「魔法使いクラブ」には溢れていた。

微笑ましい、なんて言葉では括れない世界。フィクション、という作り物であっても嘘のない世界。信じられる世界。

結仁ちゃん、たくさんたくさんありがとう。

「すみれ」に続き、これからの自分の支えになるような、特別な一冊になった。