yuriのblog

日々のあれこれや、小説・海外ドラマ・ゲームなど、好きなことについてたくさん書いていきます。

ジョン・アーヴィング「第四の手」

 

 

*以下の文章は、以前読書サイトにて投稿していたものになります。そのサイトが閉鎖される為、こちらに文章をうつしていきます。

 

 

「お気に入りの恋愛小説が増えました」

2019.02.11

 


またまたへんてこりんでおもしろい小説を読んでしまった。
ひさしぶりのアーヴィング。選んだのは「第四の手」。

私がこれまでに読んだのは、確か「ホテル・ニューハンプシャー」、「ひとりの体で」、「また会う日まで」、「未亡人の一年」の四作品なのだけど、それらに比べると、決して短くはないが手に取りやすい作品だったなあと思う。

にしても「第四の手」、だなんてタイトルからして惹かれてしまう。

モテ男の主人公パトリック・ウォーリングフォード。ニュース業界で働いていた彼は、ある日、取材中にライオンに左手を噛みちぎられてしまう(!)。
思わず(!)なんてつけてしまったが、この物語ではそのことが、特別悲劇的に描かれるわけではない。片手を失ったことによって、様々な出会いが生まれるのは確かだが、それ自体はもう “起こってしまったこと” として、着々と日々は過ぎて行くのである。

女性からの誘いには、決してノーとは言わなかったパトリック。だが、移植手術をきっかけに、ドリス(手の提供者の妻)という女性に出会った彼は、今までにない猛烈な恋をするのだった。

良いなあ、素敵だなあ、と読むたび思うのは、どの登場人物にも光が当たっていること。
主役のパトリックやドリスはもちろんのこと、ドリスの元夫オットー、移植手術を担当するゼイジャック博士、ゼイジャック博士の息子ルディー、パトリックと関係を持つ女性たち、更にはドアマンにまで、魅力的なエピソードが溢れていて愛おしくなる。

それから、物語に繰り返し登場する言葉が、とてもチャーミングなので頭から離れなくなる。

『人手不足コム』
はネットサイトの名前。

『犬うんちラクロス
はゼイジャック博士と息子との間で繰り広げられる競技(翻訳者さんは凄いなあ)。読み終わっても記憶に残っている言葉がたくさんある。

思い返せば他の作品でもそうだった。今でもふとした瞬間に呟きたくなる言葉や、小説とは分かっていても登場人物たちの “その後” が気になってしまうことがある。

また、物語に更に本が登場するのも好きだ(『第四の手』では『スチュアートの大ぼうけん』、『シャーロットのおくりもの』など)。どんな物語なのだろうとワクワクするし、実際にディケンズ作品を知ったのも作者の小説を通してだった。

それから上巻では日本が登場していておもしろく読んだ。視点が変われば見え方も変わって、小説はいつも無知な自分を冒険させてくれる。「第四の手」、こんな恋愛小説もあるのだなあと思って、またひとつお気に入りが増えました。面白かった。