yuriのblog

日々のあれこれや、小説・海外ドラマ・ゲームなど、好きなことについてたくさん書いていきます。

ジーン・ポーター「リンバロストの乙女」

 

*以下の文章は、以前読書サイトにて投稿していたものになります。そのサイトが閉鎖される為、こちらに文章をうつしていきます。

 

 

「深い森のなかで少女は成長していく」

2019.06.05

 


少しずつ読んでいた「リンバロストの乙女」。

エルノラという、森のなかで暮らしている少女のお話。
最近、十代のころに読みたかったなあ、と思う作品に出合うことが多い。
この物語もそうで、聡明で、自立心の強いエルノラの姿を追うのはうつくしい自然の描写、美味しそうな食べものの描写も加わってたのしかった。

とにかくこの物語には虫が多く出てくる。というかほとんど虫の物語といっても良いぐらい。
そのなかでも「蛾」はエルノラの人生にとっておおきな存在で、実際上巻はじめ、母親に理不尽にあたられていたエルノラは、学校の生徒たちに笑われるような身なりをしていたり、教科書を買えなかったりするのだが、その費用を蛾の採集を行い、森の希少な生き物を集めている「鳥のおばさん」に持って行くことで乗り切っていくのだった。

私は虫が苦手だけど、不思議と物語のなかの蛾はうつくしくみえる。蛾に対するエルノラの慈しむ熱視線のせいかもしれない。森のなかのことなら、また蛾の性質、種類にかけては日々の暮らしのなかでごく自然に、けれど他に類をみないほど精通していたエルノラは、学業でも良い成績を残し、着々と自信をつけていく。じぶんだけの道をみつけて奮闘するエルノラの姿には読んでいてたくさん励まされるところがあった。

そのように、自ら道を切り開いていくエルノラにも勇気をもらった一方で、魅力的だなあと思った人物がふたり。ひとりはエルノラの母親で、感情がゆたかで、間違うこともあるとはいえ、何事にもはっきりとした考えをもっていたり、頑なだったり、驚くほど柔軟だったり……いろんな面を持ち合わせている母親が私は好きだった。それからふたりめはエディス。下巻で登場するエディスもまた自問自答をし続ける弱さも強さも持ち合わせたひと。どのようなひとにも多様な面があるから、生き生きと描かれている登場人物がやっぱり私は好きだなあとおもった。

展開自体はよくある話ではあるのだが、また時代を感じる描写もあるのだが、魅力的なのはやっぱり景色、におい、色、かたち……物語のなかの森を、知っている森であるかのように、じぶんも幼いころ潜り込んだことがあるかのようについ想像してしまうところ。
深い森のなか、エルノラや母が蛾を捕まえるのに笑えるぐらい必死になったこと、悔しがる姿、渡されたお弁当箱、色とりどりの食べもの、むらがる子どもたち……ああ十代の頃に読みたかったなあ、「そばかす」も読んでみよう(姉妹編になっているとのこと)、むかし大好きだったあしながおじさん(作者は違うが)も読み返したいし、なあんて気持ちがわくわくしてくるような、色彩豊かな作品であった。