yuriのblog

日々のあれこれや、小説・海外ドラマ・ゲームなど、好きなことについてたくさん書いていきます。

トマス・H・クック「ローラ・フェイとの最後の会話」

 

 

*以下の文章は、以前読書サイトにて投稿していたものになります。そのサイトが閉鎖される為、こちらに文章をうつしていきます。

 

 

「回想の物語が好きなのでした」

2020.03.14

 


イアン・マキューアンの小説が好きで、
それでこの本を偶然手に取った時、あ、同じ翻訳者さんだ、と思って読みたくなった。

読み始めてすぐ、ひきこまれていった。
とても好みだったから。
というのはわたしは回想の物語が好きなのと、また、本が出てくる本が好きだから。ディケンズとか、この間読んだばかりのエミリ・ディキンスンとか、また映画もたくさん本の中に登場した。

静かに淡々と、過去が語られる小説は読んでいると落ち着く。加えてゆっくりと、心をかき乱される感じが続きをめくりたくなって。

大きな新しい出来事はほとんど起こらないといって良い。
主人公が、過去を、辿っていくお話だから。
ルークは育った町に複雑な思いを抱えていた。
わたしはこんな所で終わるような人間ではないと。
父親のように、地味で、“考えていない”人間にはなりたくないと。
ルークは必死に勉強をして、なんとかここから出ようと思っていた。夢を叶えようと思っていた。偉大な作家になって、歴史に残るような本を書きたいと。

現在のルークから始まる物語。
ルークは、自分が思っていたほどには、満足できていなかった。あれほど夢を抱えて、やってきたのに。
という所に突然やってきたのが題にもなっているローラ・フェイで、彼女との再会は、彼にとっては驚くべきことだった。
彼は、過去、自分の町で起こった様々な出来事(不幸な事件)は彼女と深く、ふかく関わりがあると思っていたから。
いったい彼女は、今更、わたしの前に来て何の用があるというのだろう?
けれどもふたりは、語り直すのだった。
あの頃過ごした時間は、一体何だったのだろう?、と。

わたしは、
これを読んでやっぱり自分は
人間の複雑さについて書かれている本が好きだと思った。
つまり誰かは自分でもあるということ、はっきり区切ることはできないということ、誰しもが間違いを犯すことや、見たいものしか見えていないことや完璧な人間などいないことや後悔、それでも生きてきたことと生きていくということ。