*以下の文章は、以前読書サイトにて投稿していたものになります。そのサイトが閉鎖される為、こちらに文章をうつしていきます。
「『月と六ペンス』をもう一度読みたくなった」
2020.06.26
「五匹の子豚」なんて童話のような雰囲気の題だなあと思って気軽に読んでみたら、予想以上にひきこまれた作品だった。
2度目ましてのポアロさん。
でも今回はポアロさんの存在感は良い意味であまり目立っておらず、「五匹の子豚」のとおり五人の人間の回想が続いて、それによって一人ひとりがどういった人間なのかを共に考えることができたのが、五人それぞれが当たり前だけど違う性格を持っていたのが読んでいて面白かった。
それからまた何年も経ってから過去の事件を探る話なので、思い出すことには記憶違いや思い込みなどもあるだろうから、誰が都合良いように書き換えてるだろうとか、特にこの人は感情的ではなさそうだからこそ実は裏にはとんでもない……とか勝手に予想しながら読み進めるのもたのしかった。
なによりも過去、現在の五人を見比べられたことも。
というのは時間が経てばあの頃は生命力に満ち溢れているように見えていた人も、そこから出会いやら環境やらで変わっていたりとか、逆になにも変わっていないように見えたりとかあるいは、誰から見るかによってもまるで違っていたりだとか、全員が異なる性質を(似ている面もありながら)持っているように見えたからこそたのしめた点だと思った。
そして最後のほうで少しだけ「月と六ペンス」について触れられていたのだけど、この小説の被害者エイミアス・クレイルは画家で、絵を描いている間はほかはなにも見えない人物だったのでわたしもはじめから「月と六ペンス」のことを思い出していて、強烈に印象に残りながらも初読時はムシャクシャした本だったので、しかもずっと心に居座って時間が経つごとに最初の感想とは変わってきていた本だったから、悔しいけど改めてもう一度読みたい気持ち。
2度目ましてのポアロさんだったけどこの間読んだのよりもひきこまれて読んでいました。
っていま読み終えたところだからそう言えるのかもしれないけど、やっぱり過去を振り返る系のお話はなぜかとても惹かれる。みんなが同じ日同じ場所にいたのにもかかわらず、覚えてたり覚えてなかったりするところがすごく面白いんだと思いました。