yuriのblog

日々のあれこれや、小説・海外ドラマ・ゲームなど、好きなことについてたくさん書いていきます。

サリンジャー「ナイン・ストーリーズ」再読

 

 

*以下の文章は、以前読書サイトにて投稿していたものになります。そのサイトが閉鎖される為、こちらに文章をうつしていきます。

 

「すごく空気を書いてる」

2020.05.11

 

 

ナイン・ストーリーズ」を読み返していたのだけど、すごく「空気」を書いてるなあと思う。
というのはこの小説では「戦争」は切り離せない出来事だと思うのだけど、そのことがあったうえでの日常の、更に拡大して一日の中の更に拡大して一瞬いっしゅんを、本当に登場人物たちが言いそうな会話で表現していくというか。

だから感情的な文とは真逆なのだけど生々しくて、きっとそれというのは読み手が場の空気をリアルに感じられるからなのではないかなあとか、的外れかもしれないけど思っていた。

というのは例えば何か大きな出来事があって、別にそれは「運動会」とか「ピクニック」とかなんであっても良いのだけど、後から「その日」のことを書いたら「私達は公園へと向かいました」とか「空が綺麗でした」とかになる、でも、じゃあ、本当のところは? というと、公園へ向かうまでも一秒、一秒、足を進めて右足、左足、会話、沈黙、とかがあったわけで。

さいしょの「バナナフィッシュにうってつけの日」もそうで、醸し出している空気感がすごくあって、その気配で(主人公以外の声も含めて)主人公のしんどさが伝わってくるから、結末に至るまでを紡いでるとこあるからまたそんな「声」が聴きたくなって読み返してしまうのかなあ。

だから今書いていて思ったけど、読み取るというよりかはなんだか空気を感じたくなる小説--様々見え過ぎていたのだろうな、登場人物たちは。言葉の裏の裏の裏とか、匂いとか(煙草すごい出てくる!)言った言葉以外でも言わなかった言葉でも成り立ってる部分あるよなあとか、つらつら考えておりましたとさ。

ちなみにこの本の中では「小舟のほとりで」がすきだった。

ある1つの出来事が起こっても、拡大して覗いてみたらその出来事だけがあるのではなくて、過去、未来への思い、生活音、会話、などが混じり合って出来てる今日とか昨日とか一瞬いっしゅんなのだなあと思った。

また読み返して感想の変化を味わえるまで、本棚にて待っていてもらいましょう。