*以下の文章は、以前読書サイトにて投稿していたものになります。そのサイトが閉鎖される為、こちらに文章をうつしていきます。
「トットちゃんが見つめる人生のおはなし」
2017.01.08
「窓際のトットちゃん」を初めて読んだのは、小学生のころだった。
何度も読み返したお気に入りで、本棚に大切に置いている。
トットちゃんのおはなしは大人になっても覚えていて、素晴らしい校長先生がいらっしゃったトモエ学園は、幼いころの憧れだった。
幼少期の思い出や、大人になってからの日々のおはなし、それからユニセフ親善大使としてたくさんの国に足を運ばれ、見たことが優しく書かれている。
幼少期の思い出を読むのは「窓際のトットちゃん」と重なりどこか懐かしく、どんなときも、愛情いっぱいの両親に心が温まった。
トットちゃんは入学した小学校を落ち着きがないなどの理由で退学になってしまうけれど、その後、出逢われた校長先生が素晴らしく、それからこの本ではすべての漢字にふりがなが書かれていて子どもも読めるようになっていて素敵だった。
大人になってからのおはなしは、ユーモア溢れるものばかり。
アイボを飼うおはなしは特におもしろかった。
生放送の番組で愛犬グレーちゃんをお披露目しようとすると、まるで言うことを聞いてくれない。
たとえ相手がロボットであろうと、相手をきちんと気持ちのあるひとりの生き物として接する。
だから一生懸命語りかけるけれど、いつもお家でしているような動きを見せてくれない愛犬にたじろいでしまう。
スタジオは笑いに包まれ、みんなが涙を流して笑っていても、あら今日はどうしちゃったのかしらと落ち込む姿は、幼いころのトットちゃんだった。
ユニセフ親善大使として、貧しい子供達のため、たくさんの国々へ足を運ばれる記録は、たとえ文章を追いかけることしかできなくとも、しっかり心に焼き付けておかなければと思いながら読んだ。
貧しい子ども達は世界の87パーセントに及び、日本は残りの13パーセントに入っているそうだ。
毎日きれいな水を当たり前のように飲み、あたたかいお風呂に浸かり、ふかふかの布団で眠ることが、どれだけ幸せなことか、と思う。
戦争で腕を切られてしまった男の子、売春で明日食べるものを稼ぐしかない女の子、生後三ヶ月なのに、栄養失調のためおばあさんのようにシワシワになってしまっている赤ちゃん。
どれも目を背けたくなってしまうけれど、同じ時間、同じ地球で生きている同じ人間なのだと改めて痛感した。
そのどれもが本書を開かなければ知り得なかったことで、いつも子供の平和を願って行動を起こされている黒柳さんの言葉は、ズシンズシンと胸に突き刺さった。
それはきっと、世のため人のため、というよりも、トットちゃんはトットちゃんのまま、真っ直ぐに生きていらっしゃるのだと思った。
本書を読み終えたとき、年齢は記号でしかなく、子どもも大人も、スパッと線で切り分けられるものではないかもしれないと感じた。
本当の幸せとは何か、トットちゃんが教えてくれたメッセージを忘れずにいたい。