yuriのblog

日々のあれこれや、小説・海外ドラマ・ゲームなど、好きなことについてたくさん書いていきます。

「これでよろしくて?」川上弘美

 

*以下の文章は、以前読書サイトにて投稿していたものになります。そのサイトが閉鎖される為、こちらに文章をうつしていきます。

 

 

「今のじぶんを生きよう」

2020.07.08


川上弘美さんの「これでよろしくて?」を読んだ。

主婦である「わたし」が、ちょっぴり奇妙な集まりに参加しながら、日常をおくるお話。

ものすごく派手なことが起こるわけではないけど、でも、「わたし」の日々は望遠鏡でズームしてみれば、きっちりと様々なことで満ちている。派手ではないが、風が吹けば飛ぶ、というわけでもない、むしろしっかりと消えずに目の前にある問題たちはとてもヒリヒリとして、ヨメシュウトメ問題、夫婦って? 家族って? など、見覚えのあることだらけである。

主人公がとつぜん参加することになった集まりに対して、わたしがふと頭に浮かんだのは「パッと集まりパッと解散!」という言葉。
数人の自由参加の女たちが、言いたいことを腹の底から言い合う。議論し合う。でもだからといってイヤーな感じではないのだ。お互いがお互いに、意見が違うのが前提で、だからとりあえず喋る。そう、「喋る」というのが似合う。そして散々短い時間で日頃のああでもないこうでもないを、押し付け合わずとにかくでも声に出し、意見し、あるいはのみこみ、その場合は聞き、パッと解散! また次回! という感じで清々しい。いいなあ、こんな集まりいいなあ、とおもわず思ってしまったほどだった。でも不思議と人の悩みというのは細かい違いこそあれ、それほど変わらないことだったりもするから、生きる力全開であちらこちらから聞こえて来る様々な声を読み、いっしょに居るような気にまたなり……。
誰かが正しさを主張するわけでもない。かといって、言いたいことを押し黙るわけでもない空気に、やっぱり清々しさを感じつつ。

いっぽう日々の生活の主人公「わたし」は、結構心の中で溜め込むほうだったけど、でもそれも、結論を急がず、「〜なのだろうか?」「〜かもしれない」と一つずつ、ゆっくりとあたためていく姿に強さを感じて。なぜならそんなにはっきりと、こうだ! と確信できる気持ちというのも、もちろん中にはあるかもしれないが、たいていはどちらともいえない、当てはめられない、フワフワしたものでもあると思うからだった。
とかえらそうに書いているが、わたしはすごく結論を急ぎがちなところがあって、思い込むところがあって、でも、読んでいて“正体の分からない”ことだって、大事にしようと思えた。
ちょっとばかし、ただ今のじぶんを生きてるだけでもいい。
望まずとも、変化はいつのまにかやってくることもあるから、ただ今は今のじぶんにできることを、精一杯やろうと、そんなふうにガチガチにでなく、ほっとしながら思えた一冊。その精一杯というのは別に、皿洗いでもいい。起きるのが難しい日だってあるだろう。でもそれが、その日の今の、精一杯なのならば。それぞれがそれぞれに、今日の、わたしのじぶんを生きればいいのだと思った。
そして最後にちらりと短編に出てきた登場人物が通り過ぎた気がするのだが、気のせいだろうか。
記憶違いかな。でもそんなところも含めて、本の中の世界であっても日々が続いてるような気がして、わたしもここで頑張ってゆこう。