yuriのblog

日々のあれこれや、小説・海外ドラマ・ゲームなど、好きなことについてたくさん書いていきます。

「爪と目」藤野可織

 

 

*以下の文章は、以前読書サイトにて投稿していたものになります。そのサイトが閉鎖される為、こちらに文章をうつしていきます。

 

「見ること・見ないこと」
 2020.07.22


 まず文章の雰囲気がとても好みだったので、
とん、とん、とリズムを感じながら読んでいるだけでも心地よかった。ほかの作品も読んでみたいなあ。

そしておさめられていた三つの短いお話はどれも、
読んでいると
物事を見る・見ないってなんなのかとぼんやりしてしまう。

表題作の「爪と目」を三つのなかではいちばん入り込んで読んだ。

語り手は3歳の女の子なのだけど、わたしは言葉で迎えに行ったのかなあと考えていた。
というのは、過去を。

言葉になるまえの形にもならない、
でも違和感、とか怒りは例え幼少期でもあって、
このお話では「わたし」は何も見ようとしない「あなた」--継母に向かってひたすら語りかけている、
「あなた」だけでなく「わたし」の父もまた何も見ようとしないし、そもそもそんなこと意識すらしていないし。

そんな時期のことを「わたし」が、言葉をもって迎えに行ったなら。
消化しようとしたなら、「あなた」について想像するしかないから、そんなふうに過去を迎えに行けるのだなあと、だから本を読んで自分の過去についても思いを馳せてしまうのだなあとか勝手に考えていた。

だから、これは「わたし」から「見て」
何も「見えていなかった」「あなた」だったので、「あなた」が「見て」いたもの「見えていなかった」ものは本当のところなんだったのか、見てみたくなる。
無いのは分かってるけど、きっとまた変わるだろうと思うからだ。

にしても
「見る」も「見ない」も考えていると自分の弱さ狡さばかり見える。