yuriのblog

日々のあれこれや、小説・海外ドラマ・ゲームなど、好きなことについてたくさん書いていきます。

ドストエフスキー「地下室の手記」

 

 

 

*以下の文章は、以前読書サイトにて投稿していたものになります。そのサイトが閉鎖される為、こちらに文章を転載していきます。

 

 

「めちゃくちゃおもしろくって一気読みしてしまったゼエゼエ」

2018.01.13

 

 


罪と罰」は何年ものあいだ本棚の飾りになっていたというのに、この「地下室の手記」はもうとまらんとまらんつんのめって読んでしまった(タイトルにゼエゼエなんてふざけて書いてしまったのはこのためです)。

 



おもえば去年「罪と罰」を読んだときも、難しいなあとおもったのはとにかく出てくるヴィチやらニコフ系の名前が多かったからで(しかもたびたび呼び名が変わったりして!)、それさえ頑張れば(笑)、ストーリーはのめりこんで読んでしまったのでいままで本棚の飾りにしてソーリーというきもちになって。

 

 

けれどもわたしにとって「地下室の手記」は、そんな思い入れのある「罪と罰」を軽くジャンプで超えてくるくらいおもしろかったなあ。わたしは元来じぶんでも呆れるほどに単純野郎なので、読み終えてすぐにプロフィール欄のわたしを構成する本リストを変えてしまって恥ずかしいくらい(それにしてもあのベスト十冊は選ぶのが難しい&歯がゆいですね……外してしまった小説さん、決してきみたちのことを下におもっているわけではございませんよ)。

 

 

わたしはただただ好きでおもしろくって本を読むことがやめられないので、そして誰が有名でどれが名作でなにが映画化されていてということも知らないので(勉強しろや!)、この「地下室の手記」がたいへんにおもしろかったとはいえ人生において人類においてこの文学は……なんて難しいことはまったく一ミクロンもわかっていないのだけれどもそれでも、ああおもしろかったなあという本を読み終えたあとにはなにかいまの気持ちを残しておきたくなって、だから、ほんなら自分のノートにでも書いとけやという声は無視をきめこんで(新年から被害妄想暴発)じぶんがおもったことを書いておく次第。

 

 

っていうか何より主人公がどうしようもなさすぎて笑える。いやめちゃくちゃ笑えるそして愛せる。わたしは読みながら実際に何度も笑ってしまって、とにかくグワーッと叫びたくなったかゆくなった。

 

 

物語は、遺産が手に入ったことから地下に潜った主人公の語りで始まる。わたしは序盤の固まったような独白を読んでそのあまりの鬱屈さかげんに主人公のこれまでには悲惨な何かがおこったかもしくは頭が良すぎるあまりに何一つ行動することができなくなってしまったのだとおもっていた。

 


恣欲欲求にはいつなんどきもあらがえない、むしろそれこそがすべてで人間っちゅうのはなんとまぬけな生き物やろう、といったようなことが書いてあったから。

 

けれどもそこから物語は過去のある出来事へとうつっていって、地下にひきこもっている主人公はもう四十あたり、だからその思いでは約二十年ほども前の二十四のことになるのだけれども、このたった一日の、人生においてはひとかけらにも満たない出来事が、主人公にとってはいまだに忘れられない……いや忘れようとも絶対に消えてはくれないものなのだった。

 

 

とはいえ、ささいな……というと少し語弊があるのだけれど、べつに殺人を犯したわけでもないし、血みどろの現場に立ち会ったわけでもない家が焼失したわけでもない。ひさしぶりに訪れた友人の家で、それほど互いに関係性ができていたわけではなかった友人たちと、食事の約束を無理に取りつけてしまったのである。ほとんど、いや全力の意地で。

 

 

というのもこの主人公はほんとうに感受性が豊かすぎる感じやすすぎるので、なんてことのない会話までもが人生のすべてであるかのような思いこみをしてしまって、少し横柄な態度をとられたり小ばかにされたような場面に遭遇すると、たちまち自分の思考を総動員させてありとあらゆることを考えに考えすぎてしまうのだった。

 

 

ああなんでそれ言ってしまうの。冷静に頼むでええというようなことを主人公は抑えきれないで言ってしまうから(もちろん友人たちも冷たい態度ではあるのだが)わたしはひやひやしながら、けれど一言一言が気に障ったり見栄をはりたくなるような気持ちに見覚えがあるからこそむずがゆかった。

 

 

そののちすったもんだをしたあげく、酔いのまわった主人公は女性と時間を共にする。そして、その時間で生計をたてている女性に対して酔いと屈辱と恥ずかしさととにかくいろんな後悔がつもりにつもって、まるで本のようね、などと言われてしまうほどにきれいごとの説教を説いてしまうのだった。

 

 

もうこのへんの展開にはページをめくる手がとまらんとまらんといった具合いで、地下にもぐった原因はもちろんこれらだけではないにせよ、誰にでもある、自意識と感情の制御不能! といったような状況が、たいへんにぐさぐさときてたまらなかった。

 

 

この小説にはきっと、当時のロシアの政治状況なんかもふくまれていて、いやむしろそっちを重視しながら読むのが正しいのだとおもう、のだけれどわたしはあまりにも歯がゆくって痛々しくってもう、なんて人間らしい、愛すべき、それでもどうしようもなく生きてきた主人公なんやろう、と胸があつくなった。

 

 

そして、はじめにたびたび笑ってしまったと書いたのだけれど、一番笑ってしまったのが、一方的に復讐してやろうととある将校を道で何日も待ち伏せる場面で(その原因だってささいなことなんである)、ほんのすこし相手にぶつかってやりたい、そのためにならなんだって惜しまないぞ! とひとに金をかりてまで服を仕立てて何日も待っては自分からさっと避け続けるところ。

 

 

 

と興奮して書きなぐってしまったけれども、いまのわたしのゼエゼエ状態はまぎれもなく主人公のあの食事会と同じ状態なので寝てハイを抑えようとおもいます。あああああおもしろかったもう一回!