yuriのblog

日々のあれこれや、小説・海外ドラマ・ゲームなど、好きなことについてたくさん書いていきます。

ジェイン・オースティン「分別と多感」再読

 

 

*以下の文章は、以前読書サイトにて投稿していたものになります。そのサイトが閉鎖される為、こちらに文章をうつしていきます。

 

 

「“ほどほど”が欲しいな」

2020.04.09

 

 


オースティンは続くよどこまでも。
というわけで今度は「分別と多感」を読んだ。

 

この作品は以前に別の翻訳で読んだのだけど、オースティンを改めて読み始めてからはちくま文庫がお気に入りなので再びの。

読み始めると以前読んだのが2017年で、大まかな流れしか覚えていなかった。
また、ほかの作品を読んだうえで、オースティンの少々辛口なところを味わってからこの作品に入ると、二度目のほうがより一層たのしめたなとおもう。

「分別と多感」という題のとおり、この作品には対照的なふたりの姉妹が登場する(ほんとうのところは三姉妹ではあるのだけど、三人目のマーガレットはほとんど出てこず、また人物紹介でもダッシュウッド家の末娘とだけ書かれていたので笑えた)。

姉のエリナーは分別のひと。理性のひとである。
と、理性のひとである。とか格好付けて書いておきながらわたしは、理性という言葉の意味をぼんやりな想像でしか知らなかったので調べてみると、国語辞典(三省堂)では

「人間にそなわる、筋道を立てて考え、正しく判断する能力」
と書かれていた。
いちばんの苦手分野かもしれぬ。むむむ。

対して妹のマリアンは感情爆破型のひとで、読みながらマリアンのように誰もが振り返るような姿でもなければ命をかけてあなたを愛すわ、みたいな恋はなかなか経験がないけれども、どちらかというと、いやどちらかというと、とはいわないまでもマリアンの行動にはちょっと見覚えがあった。

たとえばマリアンは姉がいつも心の奥で感情を制してほんとうはあつい思いを秘めているのを知らないから、お姉ちゃんちょっとさめてるよね、というかなんでもっと全身で喜びかなしみ表現しないのだろうとかおもっているところがあるけれども、じぶんも生活のなかでムスッとしているように見えることがあると怒ってる?、とか近しい仲だからといって聞いてしまうことがあるからである。でもそのひとからすればぜんぜん怒ってないしむしろすごく陽気な気分だったりもするから、「今日の物差し」で見てしまいごめんよ、ということが多々あるし、エリナーの作中の言葉には
おっしゃる通りですとひれ伏すしかなく、

またわたしは熱しやすく感動する本を読めばすぐ人生頑張ってくで、と燃え上がりこぶしをつきあげる勢いで鼓舞され、そのわりにはプライドが高いのでちょっとずつ頑張る、ということができず、なにかすこしのことがうまくいかないと、というよりうまくいかないと思いこみ被害妄想に陥っているときには、すべてがイヤになり、すべてを放棄したくなり、しかしつぎの日にはまた小説を読んだり詩を読んだりしてウットリ、なんてことになっているからまったく冷静が欲しい。

それでこの「分別と多感」もほかの作品と同様、結婚までの登場人物たちの心の動き、行動、などが書かれているのだけど、エリナーの視点からほとんど描かれているので、というのはどういうことかというと、ふだんはおとなしくじっと黙っているように見えるエリナーにも、様々な感情があるというのがわかる。もちろん人間だから当たり前のことなのだけど、エリナーの気持ちは本来はエリナーにしか見えないのだから、それを覗くことができる小説というのはたのしいな。興味津々。

情熱的なマリアンの恋は短期間で燃え上がって、はたから見ていても丸わかりで、エリナーの場合はあらゆるひとや場面のことを考えながらだから遅い。なんならじぶんのことよりひとを優先しさえする。ちょっと損なときもあるし、いつだって妹の心配ばかりしているし、そんなマリアンが体調を崩せばつきっきりで看病し、でもいっぽうまわりのひとを観察する鋭い目ももっており、内には秘めた思いがあってなんていうか素晴らしい。わたしの場合は自制しようとしても、その自制さえ極端になりすぎるのですべてをシャットダウン、なんてことになる。もはや自制ではなく傷つかないための壁の建設。

考えてみると理性(覚えたばっかり)は理性だからこそ、感情よりあつい場合もあるよなあ。だってそのままおもったことを放り出すのでなく、きちんとあたためなおして、確認して確認してだから、もちろんそれだって場合によるし、反対も然り、理性のみで感情がないというのもアレだけど。
というわけでエリナーとマリアンとを見て足したり引いたりできたらとはおもうが、そんなことを考えながらのオースティンはやっぱりたのしかったです。あと解説もキレキレで笑えてたのしかった。
残るは「マンスフィールド・パーク」と「エマ」やなあ。