yuriのblog

日々のあれこれや、小説・海外ドラマ・ゲームなど、好きなことについてたくさん書いていきます。

ポール・オースター「トゥルー・ストーリーズ」

 

 

*以下の文章は、以前読書サイトにて投稿していたものになります。そのサイトが閉鎖される為、こちらに文章をうつしていきます。

 

 

「見る“目”に惹かれている」

2020.04.28

 


「トゥルー・ストーリーズ」を読んだ。
嘘のようなけれどほんとうに起きた、偶然の出来事が詰められていた。

 

「詰められていた」というのは屋根裏部屋にでもこもって、記憶のメモを一枚いちまい眺めているような心地だったから。
あるひとつの出来事から始まる物語。
から始まる物語。
から始まる物語。
またはあの日あの一瞬の出来事がすこしでも違っていたら?
とかいうのは正に作者の小説そのものでもあり(本書はエッセイ集)、始まりはいったい何だったろう? というような迷路に入り込むのはたのしい。不思議だ。じぶんの過去まで呼び戻してしまう。
きっとそれは偶然の出来事そのものよりも見る「目」に惹かれているから。
なぜなら偶然の出来事というのは大なり小なり誰しもに起きることであり、とはいえそこからなにを見て(の前に『覚えている』かどうか)、感じるかは人によって違うから。
本に出てきた目の前で雷に打たれた友人のこともそう。
「悲しい」で終わらず「不運」という言葉で済まさず、人生という大きな流れのたった一日のそれも数秒の出来事ではあるけれど、起こったからこそもう「前」には戻れないし、でももしも違っていたらと問うのはやめず想像して。
そしてその目はとても他者への思いやりに満ちているから、「じぶん」のことを書きながら常に「人々」のことを書いているようにおもうから常にストイックなその「目」にやっぱりひきこまれていった、後書きのインタビューでも「現実の成り立ち方」ともいうべきものに心底魅力されているんだとおもう、と書かれていたように。

だからわたしも「見る」ことをやめてはいけないんだ。
知りたい気持ちとかあとは疑問に思うことを
例えままならない日はあっても、目を背けたいことはあってもまず想像してみることを想像してみることはできる。