yuriのblog

日々のあれこれや、小説・海外ドラマ・ゲームなど、好きなことについてたくさん書いていきます。

「ダイオウイカは知らないでしょう 」せきしろ/西 加奈子

 

*以下の文章は、以前読書サイトにて投稿していたものになります。そのサイトが閉鎖される為、こちらに文章をうつしていきます。

 

 

 

「一句に魅せられ一首に笑い」

2016.11.22

 


ちびまるこちゃんで、たまに友蔵が一句を詠んでいた。小さいころは一句の意味もほとんど知らなかったが、その切なさとくだらなさに腹をかかえて笑っていたのを覚えている。

 

けれどわたしにとって俳句、川柳、短歌などは、それぞれの違いも分からないどころか、じぃさんがしたためるおもろいもの、というぐらいの印象でしかなかった。(ごめんなさい)

 

 

では大人になったいま、ごめんなさいと謝ったからにはきちんと学んだのかと聞かれたら、ここでもう一度謝らなければならない。ごめんなさい。何もわかっていません。だってわからないんだもの。

 

 

ではなぜタイトルに「一句に魅せられ一首に笑い」などと、いかにも「わたし、そういうの、好きです」と格好つけて書いたのか。その答えはただひとつ。めっちゃおもろいやん、ということに気付いてしまったからだ。

 

 

ここで注意していただきたいのは、おもろさに気付いたというだけで、何も分かっていない事実は残っているということである。

 

そのようになんにでもミーハー精神をもつわたしが最近出会ったもの。それは川柳である。

 

きっかけはちいさな孤独だった。いろいろな事情が重なりふさぎこんでいた時期があったのだが、鬱屈した時間にとうとう爆発したわたしは、全くおもしろくもない川柳をつくり、さらにそれをインターネットにのせてしまうという恐ろしいことをしでかした。

 

 

しかし、これがとても面白かったのである。

「五七五」という限られた言葉のなかで気持ちをよみ、それを夫に無理矢理みせ、ときどき反応をくださる神様のような方に土下座し、気が付けば笑顔が増えていたのだから、川柳様に感謝しなければならない。

 

気付けばいろいろな方の川柳や短歌などをチェックし、すっかりハマっている自分がいた。

 

が、しかし。調べれば調べるほど細かい決まりがあることを知った。なるほど……川柳はわりと自由に詠めるけど、そのほかにはいろいろなルールがあるんやなぁ。ふむふむ。と、とても勉強になったのだが、いかんせん楽しさだけでスタートラインに立った自分には、専門的な本を手に取ってみても、睡魔に襲われそうで勇気が出ない。

 

もっと、自分が感じた楽しさだけに特化した本はないのかなぁ。

 

 

とすっかり小さくなっていたとき、これや!という一冊に出会った。

大好きな作家、西加奈子さんと文筆家のせきしろさんが、初心者から短歌に挑戦するという対談形式の本である。

 

うまく詠まないとあかんのかなぁ……。

 

この本を声に出して笑いながら読み終えたわたしは、もうそのように思わなくなった。初心者からスタートしたおふたりの、あまりの楽しみっぷりに魅了されたからである。

 

例えば初期の短歌をみてみると、まず文字数を全く気にしていない。そして、同じようにそのスジ(笑)のひとに怒られないか考えていた自分はそうそう、と共感の嵐だった。

 

本作では一人をゲストに招き(歌人穂村弘さん、東直子さんをはじめ、光浦靖子さんやミムラさん、星野源さんなど)テーマをもとに披露していくのだが、本当に自由で楽しく飽きない。そしてときにゲラゲラ笑ってしまった。

 

 

これらは作品の中のほんの一部であり、本書を開けば二人の、そして時にはゲストの作品も含めた楽しい世界が待っている。対談形式になっているので解説やフリートークもたくさんあり、短歌に興味がなくとも満足できる一冊だ。

 

 

また、巻末にはお互いの短歌を絡めたエッセイも書かれてあって楽しめる。

 

 

読み終わったわたしは、どんなものにせよ、やっぱり楽しむことが一番やなぁと、ありきたりだが忘れそうになったことを改めて思った。

 

下手くそでもなんでもいい、自分がたのしいと思えること、それらを愛すということは、つまり楽しむことから始まるのだと。しばらくは言葉遊びをする自分が想像できるのであった。