*以下の文章は、以前読書サイトにて投稿していたものになります。そのサイトが閉鎖される為、こちらに文章をうつしていきます。
「エッセイ読書日記」
2019.04.27
「すべてはあの謎にむかって」川上未映子
読むのは二度目。面白かった。
日常の「?」を大事にして、私も後ろ向きであっても強く、生きていきたいと思えた。
そのなかでも冷静な目を持つこと。一度目とまったく同じところでツボに入ったのが不思議だった。
本のなかで、あることを挙げながら思い出を回顧、されているのを読みながら私の思い出も後ろにずらずら浮かんでくるのが、それも過去に書かれたものを今読みながら連れてきているのがこれって一体どういう状態なんだろなあとぼんやりしてしまった。
日常のなかで私自身、たのしい時間であってもそのなかに必ず暗いどうしようもないものを抱えてしまうところがあるけれど、でも別にそれにだってなにか大切な面があること、を改めて思えて夜中むちゅうで読み返した一冊だった。また読み返そうと思う。
「村上ラヂオ」村上春樹
こちらも二度目。
といっても読み返したって何十回読んだ本でもない限り事細かに覚えている本なんてないのだなあと今回改めて思った。ほんとうにうっすら覚えているだけでほとんどまっさらな気持ちで読めたからだ。読み返してみるもんだな。感覚として懐かしい気配のようなものは感じられるし、それでいて新鮮だし。
で、作者の小説も好きなのだけど私はエッセイも好きだ。からっとしていてそれでいてクスリと笑える。音楽のことが、多く書かれているけれど、まるで知識がないので曲名やらアーティスト名やら知らないのも多い。
のだけれど不思議なのは文体の力でどこまででも読めるところだ。
またはじめて読んだ際は、アーヴィングも読んだことがなかったので、時間が経ったのだなあと思ってしみじみしてしまった。大橋歩さんのイラストが素敵だった。素敵すぎて何秒かお風呂のなかでじっと眺めていた。
「ひとりずもう」さくらももこ
この本は何度目かな。久しぶりに読んでみたら凄く染みた。
「ひとりずもう」ではまるちゃんだった頃から時間が流れて、生理がくるのに怯えた日々とか、淡い初恋の思い出とかが書かれてある。それから憧れの東京へ行ったときの話など、題材自体はみんなの身にもふつうに起こり得ることなんだけど、すんばらしいリズムの文体で、すんばらしい自虐を織り交ぜて書かれてあるからつくづく天才かよと思ってしまう。
自虐っていうのは少しでも方向がずれると「私って可哀想だったのよ」みたいな感じになるかもしくは「聞いてよ聞いてよ私の話」みたいになるところがある。
のだけれど、自虐にもいろんな自虐があって、作者の場合は読んでいるうちに生きる力がみなぎってくるのだから凄いよなあ。
んでいちばん心に染みたのはあとがきたった。後半は夢を追いかけていた頃の話だけど、家族に叶うわけないと言われながらもひたすらに書き続けた日々。
どうやら正当な少女漫画は自分には向いてなさそうだ、と悟ってからは方向転換をし、エッセイ調の作風に変えたということで、もちろんがむしゃらにやるのも大事、でもそのうえで能力を見極めるというのも限られた人生なのだから、というようなことが書かれてあってビシビシ刺さった。
私自身、二十代後半になっても未だに表現をしたいという夢が消えずに悶々としていたりする。年齢なんて関係ない、というのも聞くけれどやっぱり気にしてしまうものだし、やぶれてばかりいると自信も失う。無価値なのではと思えてくる。
そういう気持ちだったのでしつこめに染みた。気になるとはいっても頑固なところのある私は、きっと何歳になっても阿保のように模索し続けているだろうとは思うのだけれど、綺麗事なく励まされたようで刺さったのだった。
「繊細さんの本」武田友紀
最後はエッセイではないのだけれど、ふと気になって読んでみた本。
自分で自分のことを「繊細さん」と呼ぶのはさすがに気が引けるが、ニュース(事件などの)をみると寝込んでしまったりすることが多く、また光(明るさ)や音や匂いなども細かく気にしてしまうところがあった。自分の性質について、あらためて見つめ直すことができたように思う。簡単で読みやすく為になった。