*以下の文章は、以前読書サイトにて投稿していたものになります。そのサイトが閉鎖される為、こちらに文章をうつしていきます。
「生活の隙間にするり」
2019.04.03
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「女子をこじらせて」 雨宮まみ
なにかおもったり、引っかかっていたり、傷付いていたけれど、考えるのはしんどいのでなかったことにしておこう、というようなことは、これまでの人生結構あったとおもう。
だから「女子をこじらせて」を読み進めるのが辛かった。
自分というものに対して、それはもうとことん向き合った文章だったから。
私は、ここまで自分というものを「見た」ことがあったかな。
都合の良いように「そういうことにしておこう」、または「知らん」と、見ないように「見た」ことはあったかもしれないけど、いつだってそれらは直視されることなくどこかへと消えてしまっていた。
で、大人になってから「そういえば……あれって結局なんだったのか」と思い出す。
思い出した時点でもう、当時のまんまの切実さでは見ることができないわけで、ここまで掘り下げて、空回りしてた自分を「知ってた」自分を更に見てっていうのは強いし、凄いなあ。
と同時に優しいなあともおもった。だってそれは、無視しないってことだとおもったから。
もちろん作者だって、当時のことを時間が経過したのち、振り返って書かれたわけだけど、私はこれほどに徹底して現在も過去も整理することができていないから、視点をぐるんと天井に持って行って、冷静に、赤裸々に書かれたエピソードの数々を、私はしんどいなあとおもいながらも止まらずに読んだ。
繰り返しになってしまうけれど私にとっては「自分と向き合う」という意味で見せかけではない燃えるような優しい一冊だった。
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「オモロマンティック・ボム!」川上未映子
文体のリズムにのってするんするん、読んでしまう。
とちゅう興奮したのは明晰夢というのが出てきたからで、私はこの言葉を最近知ったばかり&自分に起きていた現象を把握できたうれしさでほくほくしていたところだったので、そのうえで明晰夢について読むことができておもしろかった。
金縛りとも深い関係があるらしく、そういえば自分もよく金縛りにあうなあ。
週刊誌に連載されていたまとめで、なつかしい時事ネタも出てきたり、その頃なにをしていたかなあと振り返ったりして。
とはいえ、物事を考えるという点では少しも古びておらず、一部だけを抜き取ってしまうのもあれなのでやめておくが、ふと挟まれる一文におもわずグリグリと線を引きたくなったりした。
最後までノンストップだった。
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「うらおもて人生録」色川武大
この本は、読みやすい文章で書かれているけれど、ちょっと難しかった。
というのは、作者も書かれているように生き方に正解なんてものはないし、あるならばみんなとっくにやっているからだ。
作者は「ばくち」で多くのことを学んだのだという。
なるほど読んでみると、勝ち負けの話なんかは考えたこともないようなものが多く、なんでもかんでも衝動に従って行動してしまうタイプの自分には新鮮だった。
人をよくみること、好きになること、これだけは、という自分のなかの手放せないものを、たいせつにすること。
人の真似をしようとして、爆破して退散! みたいな経験があるので、できないことに躍起にならないでなんとか生きていけたらいいな。
いまの自分には難しかったからこそ、また読み返したいなあとおもう一冊だった。
というわけでエッセイはたのしいなあ。
日々の隙間に、生活の隙間に本のなかの光景がするり。