yuriのblog

日々のあれこれや、小説・海外ドラマ・ゲームなど、好きなことについてたくさん書いていきます。

「どんぐり姉妹」吉本ばなな

 

*以下の文章は、以前読書サイトにて投稿していたものになります。そのサイトが閉鎖される為、こちらに文章をうつしていきます。

 

 

 

「物語と二人きり」

2018.10.30


布団から顔だけを出して本を読むのが好きだ。
完全に、ぺたんと寝転んでしまうと高く上げた腕が痛くなってくるから、枕を壁にもたせかけて、体を端だけ折り曲げた針金みたいにする。ちょっとだけ頭が痺れてくる。でもこの時間がとても好き。

私が今住んでるハイツの周りには高い建物がなんにも無い。だから、入ってくる日差しの遠慮のなさはほとんど暴力的で、雨は窓を突き破って直線で迫ってきそうだし、しょっちゅう鳴る雷は、カーテンを閉め切っていても光った瞬間に部屋の中が朝になったよう。そんな部屋だからただただ寝転んでなんにもしないでいる時、外の世界のあまりにも堂々とした態度が怖い。外はあんな様子であるのに、私は何をしているのだろう。でもなんにもできない。という時に私はいつも吉本ばななさんの本を手に取っていることに気付く。選んだというよりは気付いたら選んでいたという感じだった。

とはいえ、まだ数多くは読めていない。
次々と読むのではなくて、今だ、という時のためにとっておきたいような、寝かせておきたいような。それで、その時が来たらとにかくゆっくりとのみこんでいく。魔法みたいだなあと大袈裟ではなくて思う。言葉が優しい。言葉単体が優しいのではなくて句読点や流れのようなもの全部が絡まって優しさになって入ってくるみたい。

物語の中の私の目を通して私は日々を追った。
今は自分の中で閉じられた時間を過ごしているぐり子。揺れながらも、そのことにきちんと向き合っているぐり子は凄いなあと思った。強いなあと思った。強さには単純な強さから強くない強さまでいろいろだなあと思った。

それから誰かとの距離のこと。
自分以外が自分でないこと、自分以外が皆等しく自分を持っていることに私は時々というかいつも混乱しそうになる。
でも私にはぐり子とどん子の距離感が、遠いのに近いようで、でもやっぱり遠くっていいなあと思った。
始まった以上絶対に終わりがくる、という命のことを毎日考える。とても自然なことだけどでもやっぱりどういうことなのかが分からないでいる。でも、今ここで少なくとも私は物語と二人きりだ。過去でも未来でもない今ここにいることを思った。近しくて、あったかくて、泣けてきた。私はたくさんの力をもらった。

日々小説に励まされてばかりいる。私でいながら私以外の人生を味わえる。頑張ろうと思った。