yuriのblog

日々のあれこれや、小説・海外ドラマ・ゲームなど、好きなことについてたくさん書いていきます。

「繭」青山七恵

 

*以下の文章は、以前読書サイトにて投稿していたものになります。そのサイトが閉鎖される為、こちらに文章をうつしていきます。

 

 

「わたしとあなた」

2019.05.11

 

文体がうつくしくて、むちゅうで読むのを抑えたいのに止まらなかった。比喩もうつくしく、そっと自分のなかだけで閉じこめておきたいような表現がたくさん、残酷なシーンも多いが、だからこそ信じられる世界でもあった。

前半と後半で視点は変わる。
美容室を経営していて夫に対する暴力をやめられない舞。後半は恋人への執着でもがいている希子。どの人物も自分とは遠くない場所に居るような気がした。暴力をふるいながらも追い込まれていく舞、やめてよといいながらもすべてを察知しながら享受しているようにもみえる夫ミスミ。最初は嫌々ながら舞に近付いていった希子も向かい合っているのが舞なのか自分であるのかもうなにがなんだか、分からなくなっている。

閉じられた空間。ふたりだけで交わすいくつもの約束。甘美と不快感、ぐらぐら揺れて、どの関係性も今にも崩れ落ちそうなのに健やかにもみえた。与えて吸い取られて消耗して、いつだってどこにだって正解なんてないよなあ。私だって依存ばかりしてきたし今もし続けている。別にそれを良いと思ってるわけじゃないけど気付けば結構あれもこれもぐちゃぐちゃだ。

ポジティブに、ぐいっと掴んで揺さぶってくれる物語が必要なときもあるけれども、繊細に、不安定なまま綴られている小説は安心する。すぱんと線を引くように突然シーンが変わるなんて世界、ページを閉じても待っていないから。ずるずる重たい連続だから。

読み終わっても読み終わった感がぜんぜんない。でもそれは今の私には必要なことだと思った。私も分からないままで生きようと思った。