*以下の文章は、以前読書サイトにて投稿していたものになります。そのサイトが閉鎖される為、こちらに文章をうつしていきます。
「とてもかなしい・とてもおかしい」
2020.09.19
クレスト・ブックスから出ている作者の作品はちびちび読んでいて、残りあと少し。さみしい。
読んだのは「憂鬱な10か月」。
語り手はなんとお腹の中にいる子どもである、まだうまれるまえの。
にもかかわらず、もう五百年生き終えた長老のような語りで笑える。
母親が聴くポッドキャストにて知識も万全、既に世界のあらゆることについて把握済み、といっても
まだ母親の顔も知らないわけだけど、
きこえてくる会話・生活音・感情の動き(母親の血がどっと巡ったりなど)から想像をフル回転させいまの状況を見てみるになかなか結構、良くない状況だ。
常に母の近くに居る男はどうやら父親ではなく、詩人である父親とは関係が上手くいっておらず加えて恋人は父親の弟らしい、更にふたりは父親に関するある計画を立てておりそれを誰よりもそばで知っている「わたし」は、もうすぐうまれようとしてるわけだけど……。
“胎児版ハムレット” となっていたけど、ハムレットは読んだことがないのでどうハムレット版かはわからなかったがまた読んでみたい。
にしてもひたすらのかなしい、おかしい、
ゲラゲラ笑えるおかしさでなく泣き笑いという意味の、もはや笑うしかない感じ、
ついには臍の緒つかって強硬手段出ようとするし(笑)。
でもおもしろくって一気読み。
そして最後のほうは描写がうつくしくて泣き笑いからのそれだったから気持ちいっぱいになった。
うまれてくることの中には色々含まれていて、どうしようもないことだったりあるわけだけど、それでもなんかやっぱり本当にうつくしくて読んでいて胸いっぱいになりましたわ。
だってそもそもが人生泣き笑いのようなもんやんなーって。