*以下の文章は、以前読書サイトにて投稿していたものになります。そのサイトが閉鎖される為、こちらに文章をうつしていきます。
「危ういバランス」
2019.03.26
海外の棚にしかしばらく目がいかなかったのが、風邪(治った)をひいたとたんになぜか日本の小説が読みたくなって、どうやら読書というのは体調とも密接にかかわっているのらしく、おもしろいなあ。
それでなんとなく手に取ったのがこの「離婚」。
男と女が、離婚したにもかかわらずどうにも離れられない、というあらすじに惹かれた。
「ぼく」とその妻、すみ子との奇妙な関係は読んでいてものすごく親しみをもった。
愛とか恋とかいうことばでは片付かない、というか当人たちもぼくわたしはいったいなにをしているのだろうという案配。わかるわ。
そしてそんな具合を天井から見下ろしてるみたいに、冷静に書かれてるもんだから笑ってしまいそうにもなる。
たとえばひとつ屋根のした、というのにほとほと嫌気がさしてようやっと解消、引っ越し終えたにもかかわらず
ぽっかりがらんどうになった部屋をみてそわそわ、心がおちつかない様子。
結局あっちへ行ったりこっちへ行ったりとちゅう、すみ子に気になる男ができたり「ぼく」のほうにも仕事上の関係とはいえベティという女との精神的に緊張した「なにか」、
けれどもまたいつのまにか居る。もうそれは半ばやけくそのような意地のような、お互いにほとほと疲れ果てながらの「また」であって、ああ、こういう人間の弱い感じがすきやなあ。
後半の「少女たち」という短編もふくめて人と人との危ういバランス、でも確かに成立している空間をのぞいているみたいで一気読みだった。あーこんなおもろい小説があったとは。しらなんだしらなんだ。
エッセイのほうも読んでみたいとおもう。