*以下の文章は、以前読書サイトにて投稿していたものになります。そのサイトが閉鎖される為、こちらに文章をうつしていきます。
「大人になってから読んでも、素敵」
2019.05.19
映画化されている作品、というのを知らなくて、前知識なく読んだ。
舞台は高知で、ページをめくるたんびに方言が飛び交う。
主人公の「ぼく」と、東京から転校してきた里伽子。
都会から急にやってきた里伽子は洗練されていて、大人びていて、ただそこにいるだけでみんなの視線をあつめてしまうのだった。
ぼくと里伽子の仲が、急に縮まる、というわけではないのが良いなと思う。
ふたりの様子がたんたんと描かれるだけ。
なのにモゾモゾというのか、心が忙しくなるから不思議。好き、という言葉になるまえの記録というのか。どうしようもない感じ。正体のわからない感じ。
いろんなことが分かっているようで、まるで分かっていなかったあの頃。校舎に響く音。制服。放課後のチャイムとか、頭のなかを様々景色が浮かんでは消えていく。
捉えどころのない里伽子。大人びているかと思えば、子どものように危なっかしいところもあって、苛立ちながらも、気付けば目で追ってしまっている「ぼく」。
読みやすく、うつくしい文体で、カラオケのシーンでは突然「少女A」が出てきたりでおお、となるのだけど、でも今読んでも最後まで心つかまれて、良いなあ、良い作品だなあ、と思っていた。
映画もみてみたいな。ほかの作品も読んでみたいし、私は学生時代はそれほど読書家ではなかったが、大人になってからも発見があって、たえず目移り、相変わらず本棚のまえをうろつく日々なのだった。