*以下の文章は、以前読書サイトにて投稿していたものになります。そのサイトが閉鎖される為、こちらに文章をうつしていきます。
「子どもの中の大人大人の中の子ども」
2021.02.18
夢と現実を少女が行ったり来たりするお話で、主人公のマリアンヌはあるときからだを悪くし、しばらく学校も休み、ただ静かにベッドで過ごさなければならなくなる。
マリアンヌはそんなことは初めてだったから友だちは日々元気に動き回り、遊び、勉強も進んでいくのに、と不安になる。
そんな日々の中でマリアンヌは紙に絵を描いた。
そしてそこに描いたことが夢にも出てくる。
さいしょ、夢に降り立った時点では気付かないが徐々に。
そしてそこでの出会いもある。
というのは夢の中で、ということだ。
マリアンヌが描いた世界。
そこから、マリアンヌを教えに来てくれることになった家庭教師の先生が語って聞かせてくれた男の子と、その夢の男の子とが混じり合う。
マリアンヌとその男の子--「マーク」は夢で話し、マリアンヌは目を覚まし、絵を描き、そしてまた眠った。
からだが良くなるまでには時間がかかった。その男の子も先生によると具合が良くないようだった。
そんな日々をマリアンヌは、不安や恐怖を抱えながら、それからやさしい家庭教師の先生に会う度男の子の状況を語ってもらいながら過ごしてゆく……。
二人がいるのは夢の中のとあるちいさな家で、現実で会ったことはないけれど、夢に戻るたびマリアンヌはマークと話し、マークが居心地良くその家にいるにはどうすれば良いか、なにを描き足せば良いか、あのとき絵を消してしまったからマークのからだは悪くなったのではと時には苦しくなったり、それからマークと自分がここから出るためには……といっしょうけんめい考える。
現実で起こったことが夢に出てきたり、夢の中の世界を目を覚ましてからも強く意識したりすることは大人になってもよくあることで、突然病気になり、突然外に出られなくなった主人公マリアンヌの心の状態が夢を通して描かれているのを読みながら。
話は飛ぶけれどこの物語のリズムが好きだった。小説をよく読むようになってから物語を書くこともやめられなくなり、きっと下手くそでも一生続けるのだろう。
読むことと書くことは似ているようで全然違うと感じる。
書くことでわたしはじぶんの過去を一つひとつ整理して解放していくような感覚がある。
はじめのほうはそもそも物語にもならず心の中に溜まっていく一方だったけど、リズムをつかむと雪崩のように書けることがある。物語以外でも例えば日記もはかどるので大爆発だ!
この本がそうだったし、とても勝手に感謝している。
ほかには、ちくま文庫のオースティンを読むとリズムを取り戻すことができたり、そんなお守りのような本が時にあって読むこと、書くことの関係は改めて不思議だと感じる。