*以下の文章は、以前読書サイトにて投稿していたものになります。そのサイトが閉鎖される為、こちらに文章をうつしていきます。
「『レベッカ』とはまた違った雰囲気の短編集」
2020.01.18
「レベッカ」が面白くて、また読みたいと思っていたのだけど、「レベッカ」は上下巻だったので(長編は大好物だけど)次は短編が読んでみたいと思っていたのだった。
それで読んだのが「破局」という短編集。
ぜんぶで6つの短編がおさめられていて、とはいえ1ページ2段組だったので結構ボリュームもあり。
「破局」という題の作品はなかったが、その名の通りページをめくるごとに不穏さが増していくものばかりだった。
というのは、「レベッカ」の時と同様ゾクゾクと期待のようなのが一緒に充満してくる感じで。
以下簡単にあらすじを。
「アリバイ」
妻との暮らしにウンザリしていた男はある日突然、全ては自らの手でどうとでもなる、それこそ人を殺めることだって、と悟って見知らぬ家へと。
突然の訪問に女は驚くが男は部屋を借りることにする。また、怪しまれないよう芸術家であるという設定も。足繁く通うようになる男。しかし、当初は設定であったはずの絵を描くこと自体にのめり込んでいき……。
「青いレンズ」
目の手術をしたばかりの女は久しぶりに、世界を見るのに緊張していた。しばらくの間「見えない」世界に居たからだった。献身的に世話をしてくれていた病院の人たちは? 久しぶりに見る夫の顔は?
不安と共にそっと目を開けてみる女。すると、なんとみんなの顔は……。
「美少年」
旅先で古典学者の男はひとりの少年に心惹かれる。どんどん膨らんでいく空想上の世界。少年はこれまで苦労してきたのだろう、など男の物語は広がっていくばかり。そして旅は思わぬ方向へと進んで行って……。
(個人的にはこれが1番面白かったなあ)。
「皇女」
ひとつの幸せだった国が壊れていく様子が物語になっていた。現代にも溢れていることばかりで重ね合わせて読んだ。
「荒れ野」
ベンはみんなから、発達がおくれていると思われていた。うまく話せないし何事もゆっくりだった。そのせいで酷い仕打ちも受けていた彼はある日生家を後にし、家族と共に「荒れ野」に向かうのだったが……。
「あおがい」
わたしはみんなの為を思って、みんなの為にぜんぶやっていたことだったのにいつだって上手くいかない、と女は嘆くけれどもその実情は読んでみると……。
*
「レベッカ」と似たような雰囲気かと思いきや、全然違っていたけれども面白く読んだ。
とはいえ次はまた再びの、長編が読みたいなあなんて思いながら。