*以下の文章は、以前読書サイトにて投稿していたものになります。そのサイトが閉鎖される為、こちらに文章をうつしていきます。
「心揺さぶられる、愛たくさんの作品たち」
2016.10.01
西加奈子さんの作品の大ファンで、勇気をもらっています。
「i」を読み終えたいまも、余韻に浸っています。
物語の主人公「アイ」。
シリアで産まれ、その後すぐ養子へと出されました。
アメリカ人の父、日本人の母のもと大切に育てられたアイですが、その特殊な出自もあって、自分を肯定してあげることができませんでした。
テレビで流れる耳をふさぎたくなるような事件、地震、戦争。
それらに対し胸を痛めると同時に、被害なく安心安全に暮らせることに、複雑な思いを抱くようになります。
数学の教師が言った「この世界にアイは存在しません」ということば。
それは数式の意味だったのですが、アイはそれを自身に置き換えるようになります。
そんなアイが自分を見つけるまでの物語といったら簡単になってしまいますが、言葉から目が離せなくて、アイを追いながら、愛を感じました。
次に、「この話、続けてもいいですか。」は、
それ以前に出版された「ミッキーかしまし」「ミッキーたくまし」がまとめられたものです。
この作品を電車やカフェで開いてしまったときには……。
表情筋を保つことが難しくなり、たちまち要注意人物になることを覚悟しなければ。
めっちゃ笑いました。
最後に「まにまに」。
こちらも「この話、続けてもいいですか。」と同様、日々の出来事が、豊かに彩られたエッセイです。
プラス、これまでに西さんが出会った、特に心に残っている「音楽」と「小説」が紹介されています。
豊かな感性、そして物語に真摯で、決して考えることを諦めない。
「i」のことをわたしは忘れたくない。また読みたいです。