yuriのblog

日々のあれこれや、小説・海外ドラマ・ゲームなど、好きなことについてたくさん書いていきます。

「雪沼とその周辺」堀江 敏幸

 

 

*以下の文章は、以前読書サイトにて投稿していたものになります。そのサイトが閉鎖される為、こちらに文章をうつしていきます。

 

「久しぶりの感覚」

2020.02.25


数年前寒波があって、北陸に居て寝転んだままでしばらく窓の外を見ていた。終わらない雪。体調が優れず、何を読んでもなんだか頭に入ってこなくて、そんな時読み返していたのが「オリーヴ・キタリッジの生活」だった。すとんと入ってきた。一文いちぶんをゆっくりと読んだのを、外の景色を匂いを感覚を覚えている。

この本を手に取ったら何故か、そんなあれこれが蘇ってきた。

本棚に刺さっていたから手に取った。こんなのいつ、本棚に来たんだろうと思うと(初めて読んだ作者だったので)、自分が買ったのでなく、時間が急にたくさん出来た時期、暇潰しになればと、先生が園から適当に(お世話になっていた人)持ってきてくれたのだと思い出した。渡された本は当時はなんだか気分と違っていたので(もっと劇的なのを欲していた)、読まないで持ち帰ってそれで今日。

ああ、この感覚知ってるわと思った。あの寒波の時の。すっと入ってくる感じや。静かな、でも確かにあった人々の声。に耳を覚ますことは心地良い。安心する。久しぶりの感覚懐かしの。
通ってきた道。過去。雪沼の人々。

これを読めたことでわたしは、最近は心がガチガチになっていたのを改めて確認できた。“知りたい”の好奇心が爆破で追求し過ぎていたのかもネギ。全く。フラニー状態であった。読み返してズーイに喝入れてもらわんと。もちろん、だからこそ読めた時間もあったし。でもまた一方で耳を済ませて、日々を生きて、それでええやないかと読んだ途端から思えたこの本もあってふしぎやなあ。いま、何かを、解決しようとしなくたって見ているものや見てきたものは知らぬ間に交差し合って例え交差には気付かずとも振り返ってみれば、勝手に過去になっているのであって、というのが生きていくということなのかなあ。なんてまた大それたこと言い出すのは悪い癖。

このどこかは分からない雪沼の人々の声を、読めて良かったな。本の中に居ると安心できた。小説って良いなあ。だから何度読んでもやめられないんだ。困った。