*以下の文章は、以前読書サイトにて投稿していたものになります。そのサイトが閉鎖される為、こちらに文章をうつしていきます。
「詩人まど・みちおさんが見つめるいのちのおはなし」
2017.01.11
「百歳日記」は詩人まど・みちおさんによる、自然や動物や景色など、いのちについて綴られた随筆。
日頃、当たり前のように通り過ぎてしまうものたちを彩る一冊だった。
体験された戦争についても触れられている。
しょっちゅうくる空襲に逃げながらも、よく生きて帰ってこられたというおはなしは心にくるものがあった。
戦時中も、絶えず詩を書いていたそうで、けれど見つかってしまうと捨てられてしまうから、軍事郵便というハガキを二重にして間に挟み、ご飯つぶでくっつけて持ち歩いていたとか。
夫婦の詩がとっても素敵。
「トンチンカン夫婦」という名の詩は、思わず微笑んでしまう。
朝起きれば太陽の光が差して、風がそよそよふいて、鳥のさえずりが聞こえて。
道を歩けば花が咲いていて、雑草も伸びていて。
一度慣れてしまったことは、そういうものだと、驚くことはなくなってしまう。
けれど本来、同じ日はなくて、いのちあるすべてのものに限りがある。
いま生きていること、いつか終わりがくること。
病室で書かれた「百歳日記」。
日々いろいろなことは起きるけれど。優しい一冊だった。