yuriのblog

日々のあれこれや、小説・海外ドラマ・ゲームなど、好きなことについてたくさん書いていきます。

「すれ違う背中を」乃南アサ

 

*以下の文章は、以前読書サイトにて投稿していたものになります。そのサイトが閉鎖される為、こちらに文章をうつしていきます。

 

 

 

 

芭子・綾香シリーズ第二弾

未来を見据え、少しずつ進むふたりの行く末は

2017.05.06

 

前科を持つ芭子と綾香のふたりが、互いに励まし合いながら生きていく物語で、悔やんでも悔やみきれない過去を抱えつつ必死にもがくそれぞれの姿に、気付けば勇気づけられていたのだった。

本書「すれ違う背中を」は、そんな芭子・綾香シリーズの第二弾で、未来に一切希望をもてずどんなふうに生きていきたいかまるで分からなかった芭子に、少しずつ変化が訪れていく。

一日中することがなく、ただ過ぎていく時間に不安を抱えていたころが嘘のように、芭子は、やっと見つけた細い細い一本の道に光を見いだす。いつもは、過去の話をあっけらかんと話す綾香に不満を隠せない芭子も、その明るさひたむきさにずいぶん勇気をもらったのだろう。

また第二弾では、様々な「新しい出会い」が物語を動かしていく。芭子が商店街で当てた大阪旅行のチケットは、長い間塀の中にいたふたりにとってひさびさに羽根を伸ばす機会になり、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンで子供のようにはしゃぐ姿はまるで子供のようだった。

しかし散々遊びまわったその日の帰り道。綾香の同級生だったという男に出くわしたふたりは、それまでの夢の時間が嘘のようにザラリとした感覚を味わうことになる。過去は消え去ってくれない。そのことを、ふたりはしみじみ思い知る。

そのほかにも近所でストーカー事件に出くわしたり、過去の綾香と同じく夫から暴力を受けている女に出会うなど、早く平穏な日々を取り戻したい思いとは裏腹に、ささいな闇は日常のあちこちに潜んでいるのだった。

ふたりが犯してしまった過去。それらが完全に消えることはないけれど。でも、第一弾「いつか陽のあたる場所で」を読んだときと同様、時に涙しながらも起き上がる姿はとてもまぶしく見えた。