*以下の文章は、以前読書サイトにて投稿していたものになります。そのサイトが閉鎖される為、こちらに文章を転載していきます。
「人との繋がりってなんだろう」
2017.02.27
本書の著者であるミランダ・ジュライは映画の脚本に行き詰っていた。何度書き直してもしっくりくるものができず、気が散ればインターネットに逃げてしまう日々。いろいろなものをクリックして時間を消費しながらも、先の見えない日々に不安を感じていた。
そんなある日、著者はあることを思いつく。それは、毎週火曜日に届く小冊子「ペニーセイバー」に広告を出している人たちに会いに行くということだった。
売りに出されている品は様々だった。著者は最初に革ジャケットを売りに出していたマイケルに電話をし、思い切って取材を申し込む。マイケルは突然のことに戸惑いながらも受け入れてくれた。
その後も、ほとんどの売り手は取材の頼みを断ったけれど、時々、マイケルのように承諾してくれる人がいた。そうやってオーケーがもらえたときは、そこがどんなに遠いところでも車を飛ばした。何のためにやっているのか、何を求めているのか、確信もないままに。
「こんにちは」。ニッコリ笑って扉を開けてくれるのは、当たり前だけれど、アクションを起こさなければ出会わなかった人々だ。なぜなら、彼、彼女たちはパソコンをほとんど使っていなかった。たとえどんなにインターネットの世界をパトロールしようとも、見つけることはできなかったのだ。
性転換を夢見るひと、家中に動物を飼っているひと、想像の姉をイメージして写真をスクラップしているひと……。電話をかけなければ出会うことのなかった「生身」の人々にインタビューをしながら、著者は様々な思いを抱いていく。ドキュメンタリー後半の展開にはとても心を打たれた。
読み終わって改めて、「人との繋がりってなんだろう」と思った。家にいながらコミュニケーションをとれてしまう今、顔を合わせて会話をするということが、どれだけ生々しくて奥深いかを見せつけられたような気がする。当たり前だけれど、ひとりひとり、いろいろな環境のなかで「生活」をしているのだ。だからこそ、インテリア、話し方、思い出のエピソード、すべてがこれでもかというほど人間くさかった。
今も、こちらを向いてシャッターに映る人々の姿が、頭にこびりついていて離れない。