yuriのblog

日々のあれこれや、小説・海外ドラマ・ゲームなど、好きなことについてたくさん書いていきます。

「対岸の彼女」角田光代

 

 

*以下の文章は、以前読書サイトにて投稿していたものになります。そのサイトが閉鎖される為、こちらに文章をうつしていきます。

 

 

「読むたび静かに励まされる作品」

2019.06.02


こんな感じで大丈夫なんだろうか。
この先どうなっていくんだろう。
なんて、そんなことばかり、年齢を重ねても思い続けている自分がいる。

対岸の彼女」を再読した。

前回読んだのはいつだったか……まるで覚えていないのだが、読むたび私は作者の小説に励まされている。大体のあらすじは覚えていても、あれ、こんなシーンあったかな、とかなんてはっとする一文なんだろうとか、毎度発見があって新鮮だ。

専業主婦で、家にこもりがちになっていた小夜子。三歳になる娘、あかりを育てながら、何事にも一歩を踏み出せない自分に不安を感じている。
それから、小さな会社を経営している葵。おおらかで、あけすけな物言いをする葵は小夜子とは正反対のようにみえる。
小夜子が、葵の会社に面接に行ったことで出会ったふたり。ある共通点から意気投合し、会社を盛り上げていこうと距離を縮め合うのだけど……。

小夜子目線で話は進む一方、とちゅう挟まれるのは葵の学生時代。
あれ、これって小夜子の学生時代ではなくて……? と、おもわずページを戻してしまうほど、当時の葵の姿は小夜子の臆病な部分と類似している。
女子校で出会った葵とナナコ。
いびつな、けれどまっすぐなふたりの関係性は思い当たる節がたくさんあって、危ういバランスの少女たちを眺めながら、読者は「その後」の葵の姿も追うことになる。大人になった葵が、周囲に弱みをみせないのも色んな過去を経てこそなのだな、と。

読み終わり、しみじみ思った。どんな場所にいても、どんな境遇でもそれぞれが不安を抱えている。当たり前のことだけど、ふだんも頭では分かっているつもりだけど、不安を抱えながら踏ん張っている登場人物たちを眺めていたら、あらためて強く思えた。

変わるもの、変わらないもの。両方あるけれど、これからも手探りで、でも卑屈になり過ぎず抱えていけたらと思った。